■2005.10.30 塩原:日塩もみじライン(その3)




■ 明神岳展望台へ




さて ロープウェイから木道を登って、さらに山頂を目指すことにした。……といっても大した距離を歩くわけではない。リフトの山頂駅から200mくらいで山頂の展望台に到達でき、時間にして5分もかからない。

ちなみに雪が降ってしまうとこの山頂ルートは通行禁止になってしまう。木道が雪に埋まって危険だからというのが理由らしい。山頂を極めるのなら、足元の状況が確認できるいまのうちだ。




付近には、岩盤の上に這うように根を張った樹木が多い。明神岳は活火山である高原山を構成するローカルピークのひとつで、巨大な岩塊のうえに薄い表土が乗ったような地勢になっている。豊かな土を抱えた里山とはちがう。

スキー場が出来たおかげで 「気軽に登れる山」 になってしまったけれども、本来は人を寄せ付けないところなのだ。植生もかなり原生林に近い。




ここまで来るとすっかり葉が落ちて、あたりは冬景色になっている。麓のロッジからざっと+500mで、気温差を季節換算すると+2週間ほど先に進んでいることになるのだろうか。まさにタイムマシンで往来しているようなものだな。




さてこれが山頂の展望台である。




ここからは、奥塩原の山々が遠くまで見渡せる。 おお、若干雲が切れてきたようだな。




曇天のなか、わずかに日差しがさしてきたので望遠で麓の木々を狙ってみた。天気がよければ本来こんなに鮮やかな写真が撮れるはずなのである。




光が差せば、まさに黄金色。




そのまま雲待ちをしながらしばらく粘ってみたのだけれど、視野全体に日が射すことはなかった。

雲間からの漏れ光がスポットライトのように当たったほんの一部だけが鮮やかに浮かび上がる。これはこれで光の織り成す妙のひとつなのだが、本日の空模様を見る限り風景の神様はなかなか満面の笑みを浮かべてはくれなさそうだ。

…まあ、今日のところは、このあたりで満足すべきなのだろう。




振り返れば、山頂には既に落葉した冬支度完了の木々。茶臼岳ほどの荒涼感はないけれども、明神岳山頂の木々にも風雪に耐えた貫禄のようなものが感じられる。あと1ヶ月もすれば雪に埋もれてしまうのだろうな・・・と思いつつ、山を降りることにした。




■ 帰路




帰路は明神岳の山頂神社を経由して戻った。 標識には塩原八幡宮の名があって、こんなところまでテリトリーになっているのかと些か驚いた。




さて山頂で冬の気分を味わって降りてみれば、そこは紛れもない秋であった。

……こうしてみると、山国の季節というのはいかにも不思議な進み方をするものだと感じざるを得ない。そしてそれはそれで、とても面白みがある。そんなことを思ってみた一日だった。

<完>