2008.04.11 桜周遊 (その2)
■乃木神社
東那須野公園からr53を南下し、大田原市にほどちかい乃木神社にやってきた。ここは神社裏手の静沼。ちょうど桜は満開である。
乃木将軍は、日清/日露戦争の英雄にして最後の殉死者といわれる。明治天皇の大葬の儀のその日、葬送の列には加わらず自宅で婦人とともに自刃して果てた。日露戦争の旅順攻撃戦で6万名近い死傷者(戦死者は16000名余、将軍の息子2人も戦死している)を出したことに対し責任をとったと見る向きもあるが、真相はわからない。
静沼はその静子婦人の名にちなんで名づけられた沼である。造営は神社と同時期に行われ、その水は蟇沼用水から引き込まれている。周囲は桜と柳の美しい静かな庭園である。湖面には舞い散った桜の花びらが浮かんでいた。
公園として整備される前の乃木邸周辺は、純然たる農地だったらしい。将軍本人は何度も休職してこの地で農業人として生活している。引退しては復帰して・・・ということを繰り返したのは軍からの要望に答えたもので、それだけ有能だったのだろう。
さて別邸側に入ってみる。この日は、人気のない静かな空間に花と鳥の声だけが聞こえていた。
これが別邸である。瀟洒な青木邸や松方邸に比べ、飾り気のない農家然とした平屋建てとなっている。 周辺には桜が静かに咲いている。
いい感じの木があったので一枚。ちょっと光線の向きがよろしくなく花が暗くなってしまったが、まあ仕方がないか。
風景の中にある花を撮ろうとした場合、光の当たり具合はとても重要なファクターになる。風景写真を撮る人が時間帯にこだわるのはそのためで、花単体ならカメラマンが動き回ればなんとかなるけれども、背景に特定の建物や山などを入れたい場合、1日の中でベストといえる時間帯はとても短い。
筆者はというと・・・実は 「撮れるものを撮ればいいじゃん」 式のゆるい写真道なので、あまりこだわらないようにしている(笑)。「ざっくり逆光にならない程度でいいよ」 くらいまで要求水準をゆるゆるにすれば、それほどストレスをためることもなく、ちょうど良いのではないかな。
さて別邸を眺めた後は、社の正面側に回ってみた。参道は満開の桜並木である。これぞ日本の正しい風景、という感じがする。
振り返って神社側から並木をみると、花は見事なのだけれど道路工事の看板がちょっとうるさかった。 日本のお役所はもうすこし花鳥風月を愛でる心をもって工事の時期を調整してくれるといいんだけどな。
さて神社境内では名物の枝垂桜がイイカンジであった。若干ピークは過ぎているらしく葉桜気味であるけれども、まだ見頃のうちだろう。
灯篭と組み合わせてみると、以外にこの緑がいいアクセントになっている。これはこれでいい絵になりそうだ。
鳥居と組み合わせてアングルを工夫してみたけれど、鳥居側が日陰になってしまってちょっと微妙になってしまった。こういうときは昼間でもフラッシュを炊いて補助光にするという手段があるのだけれど、ど標準のカメラだけではどうにもならず。まあ仕方ない。
■烏ヶ森公園
乃木神社を過ぎて次に向かったのは烏ヶ森公園であった。市内ではもっともメジャーな桜の名所といわれている。
・・・が、メジャーすぎてクルマの止めようがない。こりゃ困ったな。
仕方がないので北側をぐるりと回って、烏ケ森神社本殿側にクルマを止め、神社経由で公園に入ることにした。同じ敷地でも花見スポットから外れると閑散としているな。
そんな次第で、神社の参道をいつもとは逆向きに歩いてみる。松林のなかにちらほらと桜が混じり、喧騒とは無縁だ。こういうのも悪くはない。
そのまま歩いて公園のほうに抜けると、もう飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ(笑) いやまあ、いいんだけどね。
桜はやはり満開である。今日がまさにスーパーどんぴしゃりの見ごろらしい。
赤みの強い枝垂桜系があったので撮ってみた。こういう色合いの桜は実は非常にカメラ写りがいい。ソメイヨシノなどのほとんど白に近い桜はオート補正に任せているとドス黒く写ってしまうケースがあるが(※)、このくらい色が濃いとうまく拾ってもらえる。
※カメラのオート露出は暗黙の了解として「平均的に18%くらいのグレー」 に対してちょうどよい露出になるようコントロールされている。ソメイヨシノなど白い花をドアップにすると、本来18%くらいのグレーが明るく写りすぎていると判断されて暗めに補正されてしまう場合がある。
さてふらふらと散策していると、提灯に "開墾記念祭" の文字がみえた。烏ヶ森の丘は明治10年代に那須野ヶ原の開墾が本格化した際の拠点で、開墾の神事が行われたところでもある。その名残で桜の時期には祭りが行われている。
願わくば、どんちゃん騒ぎの善男善女の皆々衆にも、この公園の本当の中心である烏ヶ森神社と開拓の歴史に少しばかりの感心をはらって頂きたいものだが……まあ、ムリかw
<つづく>