2008.10.04 姥ヶ平 (その3)
■帰路は峰野茶屋避難小屋経由で
牛ヶ首からは朝日岳方面を目指すことにする。時間には余裕があるのでロープウェイは使わずに徒歩で降りていこうという趣向だ。
噴気孔で硫化水素の香りを(死なない程度に)味わって・・・
ひょうたん池を見下ろすと、登山者がこちらを向いて写真を取っている様子がみえた。
さきほど越えられなかったハイマツのブッシュは池の右側一帯にあたる。実は筆者の前にもう一人、ここを越えようとしている人がいたのだが、やはり諦めて引き返していった。池はこの付近では貴重な水場で獣道が幾筋かあったのだけれど、木道が整備更新されたときに敬遠して寄り付かなくなってしまったのか、獣道はすっかり消えてしまっている。
もう少し進んで北嶺側に来ると、砂礫と高山植物のパッチワークのような風景が広がる。ここにも幾筋か涸れ沢があって、昔は登山道として使えたのだけれど今は荒れてしまって通れなくなった。ちょっと残念な気がするな。
さて避難小屋が見えてきたが・・・なんとお目当ての朝日岳はすっかり雲に覆われている。なんてこったい。
雲はどんどん湧いてきて視界は戻りそうにない。これはおとなしく下山せよという紙の思し召しなのか。
仕方が無いので、今は朽ちてしまった鉱山事務所跡と索道跡を眺めながら小休止。
ここには戦後まもなくまで硫黄鉱山があって、いまでもその残骸をみることができる。実は現在の登山道やボルケーノハイウェイ、峠の茶屋駐車場などは実はほとんどが鉱山施設の遺産なのである。現在の避難小屋も、もとはといえば鉱山労働者に飲食を提供していた売店の名残なのだ。
■変なのが湧いた!
そんなことを思い出しながら鉱山施設の礎石や朽ちた柱の状況を調べていたところ、妙に偉そうなおっさんが近づいてきた。「オイコラ!」 などとすこぶる態度がわるくて偉そうなやつだ。
そこに立ち入るな、と実に尊大な態度で命令してくるので 「お前さんこそいったい何様ですかい?」 という趣旨の質問をもう少し大人の表現でしてみた。 聞けば環境省の委託でパトロールをしているのだという。立ち入るなというのは鉱山跡地に入るなという意図ではなく、植物を踏み荒らさないように立ち入るなという意味らしい。
いったいいつそんな方針が決まったんだと聞く暇もなく、オイコラ属托氏はまた別の登山者に文句をつけに行ってしまった。…何なんだ、アレは。
鉱山時代の構造物と思われる残骸は他にもたくさん残っているのだけれど、監視者がうるさいのでは観察どころではなさそうだ。 仕方がないので引き上げるとしよう。
などと思いながら下ってくると、今度はなにやらロープが張ってある。ぐぬぬ、ここは定番の朝日岳の撮影ポイントなのに立ち入り規制とな。
うーん、植生保護ねぇ。
自然保護といえば聞こえはいいのだけれど、今まで自由だった空間に突然霞ヶ関の役人が現れて 「ここはヨシ」 「ここはダメ」 などと命令したところで、地元民である筆者には違和感しか湧かない。お前らバブルの頃はリゾート開発だのスキー場建設だのと言って国立公園の山々をどれだけ削りまくってたんだよ。
・・・などと文句のひとつくらい書きたいところだけれども、あまり有益なレポートにはなりそうにないのでこのへんにしておきたい。なんだかなぁ。
【完】
■おまけ
登山口の鳥居付近で、岩倉脇の古い社が発掘されていた。登山道との位置関係からいって、茶臼岳の登山者を守護するための山神の祠のようだ。
登ってみると、確かに山神なのである。建立の日付などは彫られていないが、文字の摩滅の具合からみて現在の碑は案外新しそうな気がする。まあ時間があったら調べてみようか…。
それはともかく、せっかくの山神様なのでささやかな祈りを捧げておこう。
二礼二拍手一礼。
自由な山は皆のもの。変な規制の網をかけようとする役人どもに天誅を。
<おしまい>