■ 2011.04.17 それでも桜は咲いたのさ(その2)
■東那須野公園
次いで東那須野公園にやってきた。ここも筆者的には最近すっかり定番となってしまった花処だ。那須塩原駅から南に1km。 そこに小高い山があり、山頂付近が公園になっている。
ここは春先には水仙の花がイイカンジになる。
水仙は、温暖な南房総では1月(それどころか年が明ける前にも)に咲くといわれる。この付近では3月~4月頃が見ごろになる。 特徴はなんといっても花持ちがよいことで、梅から桜に移り変わる公園の木々の前傾/背景として実によく景観を盛り上げてくれる。
そんなわけで桜と水仙と青空をフレームに納めてみた。ここは小高い山の上にあって周囲に余計なものが入らないのがいい。
眼下にはいつもの沼野田和(ぬまのたわ)の田園風景が広がっていた。ちょうど水田に水を張りはじめたところで、土色の耕地に鏡のような空の青さが映る。
この付近は兼業農家が多く、農作業は土日に行われることが多い。だから桜の頃の休日に景色を眺めているとこうして乾田に水が張られていく様子が見られる。どこの観光案内書にも載っていないけれど、静かなる良景といえる。
さて山頂にある展望台兼休憩所に登っていくと、こちらははまだ地震の後遺症を引きずっていた。断層みたいにみえるのは樹林帯の外縁部で、一歩間違えれば地すべりになっていたかもしれない。
ロープを越えて近寄ってみる。うーん……それにしても、これはまた派手に壊れたものだな。やはりトラス構造の無い安普請は脆い。修理後はもう少し頑丈そうなやつを作ってほしいところだ。
そんな山頂から、那須山塊を望んでみた。
満開の桜の向こうにいつもと変わらぬ山と街並み・・・。地震で石塀などは崩れたけれど、一般住宅や学校施設等においては建築基準法における耐震基準がそれなりに功を奏したらしく、倒壊はほとんど無かった。戦後この耐震基準を作成した旧建設省のOB技官諸氏には、周回遅れではあるけれど表彰状のひとつも謹呈したい気分になった。
■乃木神社
さてもうすっかり日も傾きかけているが最後に乃木神社を訪れてみた。
古い石組みなので鳥居などが倒れていなきゃいいが…と思っていたけれども、どうやらそのような事態は起こっていない。わずか2kmほど先の大田原市役所が派手に壊れたのと比べて、この泰然とした神社建築の様子は不思議な感がある。
境内に立つ乃木将軍像も、震度6程度の揺れでは倒れなかった。大正時代の石造りの技術というのは筆者の想像より余程しっかりとしているらしい。
余談になるけれどもこの神社の創建は大正5年で、関東大震災(大正12年)を経験している。もしかするとそのときに耐震補強などを講じているのかもしれないな。
さてそれはともかく肝心の桜はというと…
うおお、なんだこれはっ!?
…なんと地元で愛されてきた参道の桜並木は、いつのまにかバッサリと枝を切り落とされて超スッキリ?仕様に様変わりしていた。
なんてこったい…ここは桜のトンネルが非常に美しいところだったのに… orz
ちなみに↑これがバッサリやられる前の状態である。嗚呼…( ̄▽ ̄;)
こちらも 「ちょっと待て、スッキリしすぎだろー」 とツッコミどころ満載な思い切りの良さであった。 とりあえずこの男気な剪定のセンスには "ギロチンカット" とでも名前をつけてあげよう。
まあ切られてしまった桜を嘆いても仕方がないので、小風景をちらほらと撮ってみる。
境内を流れる蟇沼用水の橋の袂(たもと)に目を向けると、菜の花がちょこっとだけ黄色の一刺しを加えていた。 …これはこれで、ささやかなる春の風情といえそうか。
■静沼
さて並木から逸れて、境内裏の静沼方面に歩いてみた。
途中、八雲神社をみる。うわ…、ここは見事にやられてしまっているな。
そんな中でも金勢様は元気に、にょきっと立っておられるようだった。
ぐるりと奥側迄歩いていくと、静沼の桜風景はいつもの通り。桜祭りは黒磯公園とか烏ヶ盛公園の方で行われているので、ここに花見客はそれほど多くは無い。視界に入る人数は6~7人といったところで、皆カメラを持っているところを見るとどうやら筆者と同類であるらしい。…つまりは暇人ということだ(笑)
参道の桜と違って、ここに植えられている桜は枝払いはされておらず、大きく枝を伸ばして満開の花をつけている。やはり桜は、伸びるに任せて自由に花を咲かせるのがいい気がする。
ソメイヨシノの寿命は、たかだか60年。
見栄えのする外観と引き換えに、樹木としてはかなり短命な部類に入る。
その虚弱体質な幹は一度キズがつくと回復が遅く、腐りやすい。そしていちど腐りはじめてしまうと、枯れてしまうしまうこともしばしばなのである。だから不用意に枝を切るのは良くないとされている。
乃木将軍と同時期に活躍した大山元帥墓所(700m西方)では、紅葉(もみじ)と桜が交互に植えられていたのに管理に失敗して桜は1本残らず枯れてしまった。 その詳細を筆者は知らないが、おそらくは下手な剪定によるものではないかと勝手に想像している。
そのような次第で、願わくば、ここの桜は安易にチョキチョキとは切らないでほしいと筆者は思うのであった。
※追記:最近は薬剤の進歩で切り口の保護剤というのがあるらしい。ただし殺菌効果は永続しないので腐り防止にはマメに塗布しなおす必要がある。管理が面倒なことには変わりなさそうである。
・・・と、そんなことを考えているうちに西日が傾いてきた。そろそろ引き揚げ時かな。
沼の水面には、散り始めた桜の花びらが浮いている。あと4、5日もすれば見事な桜吹雪が見られる筈である。遠山の金さんではないが桜吹雪で一喝、震災絡みのゴタゴタが 「これにて一件落着!」 となってくれれば良いのだが…さて、どうなることやら。
そこような次第で、多少中途半端ではあるけれど今回はここまでとしたい。
<完>