2012.04.29 那須野のGWの見どころを眺める (その2)
■板室
さてダムから戻ったのちは板室温泉を目指してみる。那珂川河畔で人の居住する最奥部の集落である。
ここは温泉街の南端にある幾世橋。木の俣方面からの入り口にあたり、最近になって駐車スペースが整備された。東北自動車道に黒磯板室ICが出来てからはクルマの往来も増えつつあるが、それでも駐車場が満杯で溢れかえる…というほどの混雑はない。
板室には、会津中街道の宿場であった板室集落(本村)と、湯治場であった温泉街の2つの集落がある。本村の方は明治維新による会津藩取り潰し以降は宿場としての機能を徐々に消失し、現在では温泉街のほうが名実ともにこの地区を代表する存在となっている。
ここの特徴を一言でいえば、過剰な開発のされていない鄙(ひな)びた温泉とでもいえば良いのだろうか。景観を壊すような高層ホテルは無く、今でも長期滞在の湯治客の割合が多い。少なくとも、大型バスの列で乗り付けて 「さあ皆さん、じゃんじゃん買い物をしましょう!」 というノリの場所ではない。
幾世橋から眺める那珂川は、ちょうど新緑具合がイイカンジで映えていた。この2kmほど下流で木ノ俣川と合流して水量を増した後、この川は那須疎水の水源となって開拓地を潤していくことになる。
温泉街を縦貫する r266沿いには満開の桜並木が続いていた。
そんな温泉街をゆるゆると歩いてみる。山沿いの遅い春を象徴するような風景だな~ (´ー`)
ちなみに左側にチラっと看板の見えている蕎麦屋はこのときまだ開店前だった。営業していれば蕎麦を味わいながら花見と洒落込みたかったところだ。
共同浴場方面に渡る橋の付近に出てみた。
温泉街ではこの時期、鯉幟をずらりと並べて季節感を演出している。風がないとスーパーのシシャモのパックみたいな状況になってしまうのだが、この日はそこそこの風があった。…気分的には、もう少々泳いで欲しいんだけどなw
そんな川沿いで、しばし時を過ごす。
ここに日帰りの観光客が流れてくるのは午後なので、午前中は比較的ゆったりできる。水のある風景を眺めながら落ち着きたいなら、早めの時間帯に来るのがいい。
さて温泉街を出たのちは、本村を経由して混雑エリアの湯元方面に向かう。…が、せっかくなので本村付近の風景もいくらか載せておこう。
ここは集落の南側に広がる畑である。これの何がいいの…と言われると筆者も説明に窮するのだが(笑)、敢えて言うなら区画があまりキッチリとしていない "産業臭の無さ加減" に渋い味わいがある。ここは周辺がひたすら山林で、 ほとんど自家用の野菜くらいしか作っておらず、斜面の起伏も自然の地形そのままで、要するに近代的な農業土木の洗礼を受けていない。日本の古い山村集落の様相が、そのまま残っているのである。
ただし道路の方はすっかり近代然としてしまって、集落そのものはごく普通の住宅地といった感じだ。まあこればかりはいつまでも昔話の世界に生きていてくださいとも言えないので仕方が無いところだけれども。
※昔の街道の様子を感じたい向きには、2kmほど下流の阿久戸河岸に向かう旧道をお勧めしたいところだが、ここでは割愛したい。
■南ヶ丘牧場
そのまま r266 を進んでいくと、那須ハイランドパークを過ぎて湯元が近づいてくる。そろそろ混雑エリアで、クルマもだんだん多くなってくる。ここでは南ヶ丘牧場に立ち寄ってみよう。
ところで混雑エリアで渋滞に巻き込まれないためには、一般の観光客とは逆方向に抜けるのが鉄則である。外部からやってくる観光客の多くは、東北自動車道の那須ICからr17(那須街道)を通ってロープウェイ方面を目指して渋滞の車列を作る。この一部が一軒茶屋交差点からr266を南ヶ丘牧場/ハイランドパーク方面に溢れてくる訳だが、逆方向の車線はガラガラで、筆者は今回そのルートを通っている。
午後になってしまうと帰宅渋滞が発生して上り/下りともカオスな状況になってしまうのだけれど、午前中なら逆走コースで十分に抜けられる。このあたりは賢く振舞いたい。
時計をみるともう11時近いので、脱出のタイミングを考えるとあまり長居はできない。駐車場は満車状態だったが、なんとか入ることが出来た。さて速やかに風景をチェックすることにしよう。
中に入ると、昨年の震災騒動などどこかに吹っ飛んでしまったかのような人出だった。
実は筆者のお目当ては牧場特製のソフトクリームだったのだが…行列が長すぎて、これはちょっと無理っぽい。周囲を見渡すと、老いも若きも皆ソフトクリームを頬張っている。…うむむ、恐るべしそのブランド力(^^;)
仕方がないので筆者は列の短い牛乳コーナーで濃いぃ~牛乳を飲んで一服してみた。ここで生産されているのはガーンジー牛という希少種の牛乳で、生産量は少ないが濃厚な味わいが特徴だ。アイスクリームもこの牛乳で作られていて独特の風味がある。
釣堀やパターゴルフはとりあえずスルーして、奥の牧草エリアに行ってみた。人が多いのでなかなか邪魔な人影の写らないアングルでシャッターを切るのが難しかったりするのだが(笑)、とりあえず牧草があってウマーな風景をゆったりと撮ってみる。
ここは乗馬体験コーナーで、子供用、大人用それぞれのコースがある。子供より大人のほうが乗っている人数が多いようにみえるのは…多分、気のせいだろう(^^;)
そのさらに奥が放牧場になっているのだが、緑は映えるものの馬や牛の姿は見られない。奥に四、五匹見えるのは観光用に放されている羊で、これで全部である。
牛が居ないのは原発事故に関する安全対策の一環のようにも思えるが、牧場の人に根堀り葉堀り聞いたわけではないのでこれは筆者の主観である。念のために申し添えておくと、昨年7月の段階で牧草地での放牧は解禁になっている。しかし今でも牛の飼育を輸入飼料中心に行っている牧場は多く、単に数値をクリアしたからOK、とはならないところに客商売の難しさがあるようだ。
しかしまあ、そういうところを乗り越えて那須は観光地として着実に復活しつつある。反原発を掲げる左翼活動家などはそれが気に入らないようで、頭のゆるい主婦を相手に相変わらず恐怖を煽ったりしているようだが、地元民の大多数はもはや彼らを相手にはしていない。
1年前は未知の恐怖であった放射線に関して、現在ではひろく知識が行き渡り、恐怖の度合いの値踏みは一巡した。いつまでも枯れ尾花を怖がっているほど世間の人は無垢でも無知でもないのだ。
そんな訳で、地元の敵=へんちくりんな活動家に一矢報いてやるために、牧場特産のスモークチーズを購入しておつまみにしてみることにした(^^;)。…こんな闘争なら、いくらでもしてやるぞ(笑)
■旧・安愚落牧場跡
さて正午を回ったところですみやかに那須街道を抜けて、りんどう湖方面を目指す。…といってもりんどう湖そのものは混雑スポットなのでスルーである。これから向かうのは福島県との県境にちかい牧場エリアだ。
途中、池田のあたりで r21 で滞留するクルマの列と遭遇する。そろそろリターン組の渋滞が始まりつつあるらしい。こういうところはするするスルー~で通り抜けてしまおう。
そこから r68 に折れて、あまり観光渋滞の生じない酪農地帯に入った。そこでまず訪れたのが、昨年の震災で倒産した安愚楽牧場の跡地である。ちょうど山が見渡せるロケーションがイイカンジで、なにかと毎年訪れているところだ。
この牧場は九州宮崎にも大きな放牧場を持っていて、2010年の口蹄疫発生で大量の肉牛を殺処分しなければならなかったのだが、その後資金繰りが悪化し、2011年の震災がトドメを刺した格好で倒産してしまった。ここは旅と写真のサイトなのでその経緯をいちいち書くことはしないが、牧場の入り口に道路を掘り込んで消毒槽 (クルマのタイヤが消毒液に浸るようになっている) が作られているあたりに、その影響が垣間見える。
本日はここをあまり奥まで行く予定は無いので、マターリ感のあるあたりで写真を1枚。大人の事情さえなければ、とても穏やかないい景観なのだけれどなぁ。
この風景がいつまで残っているのか予測は難しいけれど、何とかうまく施設が活用されることを祈っておきたい。
…南無南無、阿毘羅吽欠蘇婆訶~(´・ω・`)
<つづく>