2012.11.03 紅葉の日塩もみじラインを行く:前編(その1)




日塩もみじライン周辺の紅葉の様子を見てまいりました(´・ω・`)ノ



なんだかんだと雑務に追われている間に10月が過ぎ去ってしまった。世の中は不況感が底無し沼のように沈滞した空気を醸し出し、サラリーマンの懐は冷え冷えと澄み切った秋風に吹かれまくっている昨今だったりするのだが、こんな季節のレジャーには、お金をかけない貧乏志向の紅葉狩りが一番である。そんな訳で、久方ぶりに会津西街道+日塩もみじラインを流してみることにしたのであった。

ところで今回、サイトのPHP化にともなって実験的に紅葉チェッカーなる仕掛けを作ってみた。最低気温の推移から紅葉の始まり具合を予見できる…と、少なくとも Wikipedia などには書かれているので、それがどの程度妥当なのかを確認してみようという趣向である。いつもとは少々毛色の違った書き方になるかもしれないが、そのへんはまあよろしくご了解をいただきたい。




ところで、紅葉の予測にはとある計算式が使われている。2012年現在は以下のようなものだ。

y=4.62×T-47.69

これは関東地方における紅葉の見頃を予測する近似式である。yは10/01からの経過日数で与えられる見頃の最盛期、Tは9月の平均気温で、他の変数は無い。なんと9月の平均気温だけで紅葉時期を予測してしまおうという大胆なもので、しかしながらこれは気象庁の公式の予測式なのである。毎年10月に入ると紅葉の見頃予測が発表されるのは、9月の平均気温の確定を待って発表しているものだ。(※4.62とか47.69の係数は時々見直されている)

例として今年=2012年の五十里ダムの平均気温をみると、19.7℃とかなり暑かった。これを計算式に当てはめると y=4.62*19.7-47.69=43.3 となる。10/01の43日後とは11/13であり、本日(2012/11/03)は計算上は見頃(最盛期のど真ん中)から10日ほどフライング気味ということになる。ただし予測式の誤差は±6日、さらに見頃の持続する期間が±7日間と見込まれているので、予測精度としてはかなり大雑把なものと言えそうだ。




一方、リアルタイムな気温の変遷で紅葉時期を捉える方法もある。前回のレポートでも書いたいわゆる8℃-5℃評価法のことで、1日の最低気温が8℃を下回ると葉の色付きが始まり、5℃を下回ると鮮やかになるとの経験則による。当サイトの紅葉チェッカーはこれをグラフに表示しているものだ。

なお日々の生データを並べただけでは変動のバラツキがあって全体傾向が判断しづらいので、株価のトレンド分析などでお馴染みの移動平均(Moving Average:MA)で適度になめらかに均したグラフも用意した。こちらのほうが紅葉の見頃の見極めには便利だろう。

参考までに、今年はもう奥日光が見頃になっているので、グラフと色付きの時期(残念ながらこれは知人情報で筆者自身は行っていないのだが^^;)を上図↑に示してみた。理屈通りに 5℃ を下回って数日経ってからグッと色が乗ってきているようで、これなら 「今週末アタックするべきか」 くらいの判断材料には使えそうだ。今回のコースは、このグラフと実際の紅葉具合がどの程度符合するのかを見極める意図もあって、高低差のあるルートを選んでいる。とにかく、今回はそういう趣向で行ってみよう。




■アプローチは熊谷から




さてそんな訳でアプローチは筆者の秘密基地のある熊谷から始めることとしよう。9月は猛烈な残暑、10月も高温傾向が続いて、ようやく10月末に最低気温が10℃を下回る日がちらほらと出てきた程度の熊谷だが、それでもフライング気味に色付いている木々はある。"小さい秋" はもうそこらじゅうに忍び寄ってきている。




紅葉というのは雑多な広葉樹の落葉プロセスの一部であり、樹種によって早い/遅いのばらつきが相当にある。わざわざ行楽地に出かけて行かなくても "葉が変色して落ちる" という現象は案外身近で見ることができる。平地で紅葉の早い樹種というと、まずその筆頭は桜だろう。公園ではもう9月のはじめ頃には葉が褐色気味になってきて、早々と散り始めてしまう。

…が、その光景を見て "紅葉狩り" を楽しむ人というのは殆どいない。理由は単純で、人が見て "美しい" と思うほどには鮮やかさが出ないためだ。観光産業的に持て囃(はや)される、或いは行楽客が求める紅葉とは、赤や黄の原色系のメリハリの効いたものであり、渋い色合いの褐葉(かつよう)などはものの数には入らない。理不尽といえばその通りなのだが、世の中の仕組みはそういうことになっている。




そんな褐葉の木々が入り混じる風景を横目に東北道を北上していくと、やがて宇都宮JCTが見えてくる。ここからは日光宇都宮道に分岐して今市を目指す。




何度見ても 「ETC車ってそんなに少ないのか?」 とツッコミを入れたくなるようなレーン構成の料金所を過ぎると…




平地より幾分色のノリの良い木々が見え始めた。…といっても、まだまだ紅葉狩りの対象になるほどの色付き具合ではない。先週あたりから極上の紅葉具合になっているのは奥日光(標高1300m)であり、今秋あたりがそろそろ東照宮(同675m)の見頃なのである。少なくともTVや新聞ではそう言っている。




■今市




やがて今市ICに至る。今日は出てくるのが遅かったので、猛烈な行楽渋滞になっている日光に突っ込むのは見送って、ここから鬼怒川渓谷を登っていく予定だ。高速道路情報によると、日光宇都宮道の終点=清滝IC(いろは坂の起点)から6kmほどが渋滞で身動きがとれなくなっているらしい。…ということは、ここで降り損ねると間もなく缶詰状態になるということだな(^^;) …やれやれ。




そんな訳で今市ICからシタミチに降りてみたのだが…うわ、さっそくここから渋滞か~( ̄▽ ̄;)




しばし渋滞に巻き込まれて時間をロスしながら、ノロノロと市街地を行く。聞けば東照宮方面は殺人的な混雑らしく、これならさっさととR121(会津西街道)で鬼怒川渓谷方面に抜けてしまうのが利口というものだろう。




さてここは旅と写真のサイトなので、車窓写真で申し訳ないが一応紅葉具合をチェックしておきたい。これは大谷川公園の様子である。周辺の木々はそこそこに色付いては来ているが、"紅葉" でも "黄葉" でもなく、地味な褐葉系の色合いが多いようだ。




ここで気温データを見てみよう。この付近のトレンドは、実に渋い展開となっている。10/15頃までは比較的ストレートに気温が下がっていたのだが、そこから2週間ほども色付きの始まる8℃ぎりぎりの寸止め状態が続いていて、鮮やかさの出てくる5℃のラインにはぜんぜん達していない。ようやくここ数日で明瞭な下げトレンドに移行してきているような状況なのだ。

こういう状態だと葉緑素がなかなか分解されずにいつまでも残り続け、黄色(カロテン)や赤色(アントシアン)の色素が葉の中で作られても、葉緑素の緑色(クロロフィル)が混ざるためいまいち色彩がパっとしないらしい。




それはつまり、今見ているこの景色そのものである。黄色はまだ緑色が単純に引き算的に消えていく一方だからそんなに酷いことになはっていないけれど、赤系は冴えが無い。

…さて、これが標高を上げていくとどうなっていくのだろうね…(´ー`)




■鬼怒川温泉




ようやく渋滞を抜けだし、以降は会津西街道をひたすら北上していく。混雑が見られるのは東部ワールドスクウェアのあたりまでで、そこを過ぎるとクルマも少なくなってくる。その先にあるのは鬼怒川温泉である。




ここでは視界の通るランドマークとして楯岩付近を見てみよう。




楯岩と言ったらもうこの吊り橋しかない。鬼怒川温泉の肝いりで作られた楯岩大吊橋である。



…が、これが思ったほどには観光客がいないのである(^^;)。吊り橋は予想に反してガランとしていた。本日は日光いろは坂と日塩もみじラインの紅葉が盛んにニュースで流れているので、皆そちらに行ってしまってここは埋没してしまっているのだろうか。…ロケーション的には良い所なんだけどなぁw




ここの標高は390mほどある。レベルとしては今市とほとんど変わらない。木々の色付きはそこそこ始まってはいるけれど、やはり見頃にはまだ少々早いように思える。




十分な低温が得られていないせいか、赤系統の葉の色はまだ染まりきらずにオレンジ色にとどまっている。これは先月の那須でも見られた傾向で、気前よくスカッ…と冷え込みが来てくれないと赤味が強く出ないのである。



 

■余談として ~紅葉帯の話~




…ところで、紅葉に標高依存があるならば、断崖絶壁の上と下でも色づきが違うのではないか、とご指摘の向きもあるかもしれない。…が、鬼怒川渓谷くらいの規模の断崖なら崖上でも崖下でもそれほど紅葉の具合に極端な差異は生じない。

紅葉に標高依存があるとしてもそれは数百メートル単位でみえてくるもので、仮に高さ100mの断崖があったとしても、その上端~下端の気温差は0.6℃くらいでしかない。局所的な冷え込みがくれば逆転現象だって起きてもおかしくはないレベルだ。




しかしそれでも大局的には紅葉は標高依存が出る。参考までに那須の大倉山↑の遠景を載せてみよう。紅葉のバンドはこんな感じで帯状に降りてくる。ここで見えているバンド幅は高さ方向で300mほどだが、風の強い高山でなければもっとゆるやかで幅広なものになる。本日の鬼怒川温泉郷は、この下端付近にいると思えばよい。




そんなバンドの下端でも、桜はもうフライング紅葉で散ってしまっていた(爆)。行楽客が紅葉を求めてここにやってくる頃、もう桜は枯れ木のような状態になっている。…ちょっとばかり、気の毒だなぁ…(^^;)




■ 龍王峡




鬼怒川温泉を過ぎてからは、龍王峡へと向かう。隠れた名所(?)であるらしい秘宝殿は本日も華麗にスルーである。なにしろここは、年がら年中 "春" しかないのだ(核爆)




龍王峡は日塩もみじラインの入り口にあたり、会津鬼怒川線の龍王峡駅の目の前が渓谷になっている。付近には路線バスも走っているがR121(会津西街道)を南北方向に走るのみで、残念ながら日塩もみじラインを通って塩原と結ぶ路線は無い。

もみじラインを登っていくのは遠方から来る観光バスが主体であり、マイカーを持たない人が鉄道でやってきてもこの上には登れず、自動的に鬼怒川に沿って湯西川温泉、川治温泉、鬼怒川温泉方面に分散することになる。このあたりは大人の事情でそうなっているので筆者がどうこう言う問題ではないが、クルマを持たない人はちょっとだけ気をつけたほうがいい。





その龍王峡は、クルマがあふれて滅茶苦茶に混雑していた。会津西街道にしても日塩もみじラインにしても、途中にコンビニなどは無いのでここが補給基地の役割を担っている。筆者もここでお茶と缶コーヒーを補給することにする。
 



さて肝心の龍王峡はどうだろう。ここは標高460mあまり。鬼怒川温泉よりは70mほど高い。




といっても渓谷はドライブインから30mあまり下っていくので、高さ的にはたいして変わらないような気もするな。



木々の色は、そこそこの色具合にはなっている。相変わらず赤が冴えないのは、まあ冷え込みがまだ来ていないので仕方のないところだろう。




定番の五竜王神社までやってきた。もうあと一週間くらい待ちたい気分はあるけれども、秋の雰囲気はそれなりに感じられる。




気のせいかもしれないが、鬼怒川温泉よりも黄色の色付きはよさそうだ。これを見ると多少なりとも登ってきただけのことはあるということか。




ここで、また気温推移をみてみよう。今市と比べてせいぜい1℃くらいしか違わないのだが、移動平均(5day-MA)で8℃ラインを下回っている傾向はみえる。赤系の色は乗ってこないが "黄葉" は進展しそうなレベルである(※)。

…それにしても、紅葉の神様の意地悪?があったのか(笑)、2週間も同じ気温レベルを引きずっているというのはちょっとどうよ、という気分がしなくもない。10月前半のレートでそのまま冷え込みが来ていれば、今週あたりはもっと鮮やかな紅葉が見られた筈なのにねぇ…(´・ω・`)

※寒暖差も関係してくるので最低気温だけで決まる訳でもないらしいのだが、素人にはなかなか判断がつかないのでここでは細かいことは問わないでおきたい(^^;)




橋まで降りて見渡してみると、おおそれでも赤色の出ている木がちらほらと見えるな。
 



これなら、あともう1~2℃、ちょこっとひと押し的な冷え込みが来れば、来週あたりの鬼怒川沿いは相当に綺麗な状態になるんじゃないだろうか。




…さて、それではいよいよもみじラインにアタックをかけてみるか。

<つづく>