2012.11.04 紅葉の日塩もみじラインを行く:後編(その3)
■ハンターマウンテンスキー場
そんな訳でハンターマウンテンスキー場にやってきた。ここからはロープウェイ(スキーリフト)で明神岳山頂を目指してみよう。ここは夏場はゲレンデを利用した百合園として観光客の人気を集めており、ロープウェイはほぼ通年営業している。スキーコースの最上部は明神岳最上部で、展望台のある山頂までは10分ほど歩けば到達できる。
ちなみにここのロープウェイは、観光ポスターでは "ロープウェイ" と書いてあり、呼込み用の幟には紅葉 "ゴンドラ" と書いてあり、乗るときに購入するのは "リフト" 券である。名称くらい統一してくれないと、せっかく紹介しようと思っても表記が悩ましいったらありゃしないのであるが(笑)、割とどうでもいいような気もするのでここでは一応ロープウェイということにしておこう(^^;)
敷地に入ると、駐車場周辺はカラマツの黄葉で黄色に染まっていた。この付近にくると楓の自然林は少なくなってカラマツや白樺が多くなる。これが一斉に黄色になるのでなかなかに壮観である。カラマツは白樺よりやや遅れて黄葉のピークを迎え、なかなか葉を落とさずに頑張るので比較的遅くまで色を楽しむことができる。
見ればロッジ前に植えられたモミの木と、楓、白樺が面白いコントラストを描いていた。白樺は黄葉のピークを過ぎて既に落葉しているが、楓は葉を落としながらもまだ頑張っている。モミの木は常緑樹なので青々としている。これにまだ若干の緑を残しているカラマツを加えると、一口に紅葉(黄葉)と言っても実は結構幅広い現象であることがわかる。
紅葉についていろいろ調べていくと、やはり観光情報のターゲットになっているのは主に楓で、白樺というのはまず登場しない。近種のダケカンバなどは落葉後の密集林が初冬のモチーフとしてよく取り上げられるけれども、やはり扱いは地味である。カラマツに至っては存在すら忘れられているんじゃないか(^^;)とすら思えるくらい可哀想な状況になっている。
…もちろんそれぞれに見どころはあり、写真サイトや登山系のサイトを巡ると情報を得ることは出来るのだけれど、観光情報としての紅葉というのは、やはり楓がデファクトスタンダードになっている。行楽客が求めるのはどこまで行っても 「楓の赤」 ということになるのだろう。
その楓も、ここではそろそろ限界が近いらしく落葉気味の木が目立ち始めていた。
さてそれでは気温傾向を見てみよう。今年のハンターマウンテンの駐車場付近(1130m)は紅葉条件としては理想的な状態だったようだ。8℃ライン、5℃ラインともほぼ一直線に突破して冷え込みが来ており、その後凍結しない程度の低温状態が長く維持された。こういう状況だと葉の色は長く鮮やかさを保つ。
しかし移動平均(5day-MA)で見ると、色付きの始まると言われる最低気温8℃のラインを下回ったのが10/8頃、色付きが鮮やかになると言われる同5℃を下回ったのが10/13頃で、紅葉が始まってから本日(11/4)までに既に4週間近く経過している。
紅葉は色付きが始まって2週間くらいが見頃と言われるが、葉が紅葉(黄葉)した状態でいられる期間にも限界があって、どうやら4週間というのは白樺にとっては長すぎ、楓にとってもそろそろ厳しい頃合いであるらしい。
※スキー場は風の当たりやすい斜面でもあるので、平地なら頑張れる程度の状態の葉が風で落とされている可能性もある。…が、さすがに筆者はそこまではチェックしていない(^^;)
さて係員氏に 「上はどうですかね」 と尋ねてみると、今朝は雪が降ったという。掲示板に気温が書いてあり、日が昇って9時になっても山頂は氷点下のようだ。ほほう。
ゲレンデに出てみた。気温こそ5℃だが本日は風もなく、もうマターリとして平和そのものである。
日ごろから時間に追われている現代のサラリーマン諸氏よ、こういうところで、ぼーーーーーっと過ごす休日というのもなかなかに素敵だぞ。
■しばし空中散歩へ
さてそれではロープウェイに乗ってみることにしよう。
毎度毎度秋に来るころにはすっかりシーズンが過ぎてしまっているのが常だったのだが、今年は割と色がしっかりしていて窓から眺める景色も清々しいヽ(´ー`)ノ
カラマツもなかなかいい色を出している。若干緑を残し気味の個体もあり、楓よりも色付きは遅いようだ。
そんな黄金色のカラマツ林の向こうに、前黒山(1630m)の山頂が見えてきた。
…ん? なにやら白いものがみえるな。
雪…というより、あれは樹氷ではないだろうか?
日留賀岳方面をみると、やはり白くなっている。今日はかなり広範囲で冠雪があったようだな。
紅葉、黄葉、そして樹氷か…
今日は盛りだくさんで実にいい小旅行になっている気がする♪ ヽ(・∀・)ノ
そのまま、ゆったりと景色を眺めながら山頂駅まで揺られた。やがてカラマツ林はなくなり、あたりは落葉したダケカンバの樹林帯となった。直線距離にして2.5km、わずか10分ばかりの移動だが、季節の移り変わりは如実に感じられる。
ほどなく山頂駅に到着。ゴンドラから降りて、外に出てみると…
おお、わずかではあるけれども雪がっ…♪ ヽ(・∀・)ノ
そして周囲の立木は、樹氷で真っ白になっていた。…こりゃぁスゴイな。今日は紅葉を見に来た筈なのに、こんな景色を見ることになろうとは。
せっかくなので、樹氷をアップで撮ってみる。氷の結晶は、西側に向かって伸びていた。樹氷(霧氷)は風上側に成長していくので、その形状で風の向きを読むことができる。西から吹いてくるのは秋から冬にかけての季節風である。
…つまりこれは、冬季ぎりぎり日本海性気候の端にあたるこの山に、スキー場を営むことので来る程度の降雪をもたらす冬の風が、すこしばかり早めの出前サービスを行っていると思えばよいのだろう。「紅葉が遅いねぇ」 …などと呑気なことを言っている人間を追い越して、季節はもう冬に向かって動いているわけだ。
もう日が高くなって表面などは少し溶けてきているようだが、まだまだあたりは白く凍っている。時計をみるともう11時を過ぎている。2時間前には氷点下3度だった気温は、いまはどのくらいあるのだろう。
さて樹氷をもたらした冷たい風の吹いてくる方向を見渡してみる。紅葉の "栃木の山" の向こうに見えるのは、南会津の山々だ。…もう、向こうはすっかり雪景色であるらしい。
一方、目を足元に向ければ、カラマツ林にダケカンバ。…晩秋のシンボルみたいな景色だな。11月初旬だと、筆者的には雪よりはこちらのほうがしっくりとくる。
■明神岳山頂
さてせっかく来たので山頂展望台まで行ってみよう。
うっすらと雪の積もった木道を歩いておよそ10分ほどで、山頂展望台に出ることができる。
…あたりは鳥の声ひとつ聞こえない静寂の世界。ときどき風がふくと、シャリシャリと乾いた音がして樹氷が舞い散る。
そして足元には、こんな樹氷のかけらが積もっていくのである。踏めばやはり "シャリッ" …と氷の結晶の砕ける音がする。首都圏の平野部ではまず見られない、初冬の山の風物詩である。
展望台に到着すると、先客が遠景を見ながらマターリしていた。皆、紅葉を求めてやってきた観光客らしく、「すごいねぇ、雪だよ、樹氷だよ~」 などと言っている。
ここからは釈迦ヶ岳(正面右側のピーク)、鶏頂山(同左側のピーク)見渡せる。ここから見ると岡みたいにしか見えないが、あれが高原山塊の主峰である。
その向こうには日光連山が見える。正面に見えるのが女峰山で、中腹に大笹牧場が見えている。左側にちょこんと見えているのが男体山、右側が太郎山、その奥で雪を被っているのが日光白根山だ。
さらに目を西側に転ずれば、鶏頂開拓がみえる。その一列奥側の峰々の連なりが帝釈山~枯木山~荒海山の尾根で、栃木県と福島県の境界になっている。遥か彼方で雪を被っているのは会津駒ケ岳の山塊だろう。さらにその向こう側には新潟県の魚沼丘陵があるはずだが…さすがにここからは視界が通らない(笑)
さて気温傾向をみると、明神岳山頂部の紅葉の季節は非常に短かったようだ。8℃ライン突破が10/05頃、5℃ライン突破が10/8頃、そして10/15頃には0℃となってしまった。その後は度々氷点下となっており、降霜、凍結などを繰り返したと思われる。
これだと実質的に紅葉の見頃は一週間くらいしかなかったということになりそうだ。…場所によっては、こういうことがあるんだなぁ(´・ω・`;)
その後は、山頂の明神神社で世界の平和と日本の繁栄と野田政権の崩壊を祈願し…
樹氷をチラ見しながらロープウェイまで戻った。
…さて、まだまだコースは続く。再び、紅葉の世界に戻ることとしよう。
<つづく>