2012.11.04 紅葉の日塩もみじラインを行く:後編(その5)
■湯西川ダム
湯西川ダムに向かうには、新設の上野トンネル、打越トンネルを通過していく。いずれも旧道がダム湖に沈むので崖上に掘削された新ルートである。
実は国土地理院の地図(1/25000)にはまだ湯西川ダムは載っていない。なにしろ完成式が先月 10/06 に行われたばかりの出来立てホヤホヤのダムなのである。よって↑掲載MAPも取って付けたようなダム湖具合で申し訳ない(^^;)
ここは五十里ダムとはほとんど連続するような位置にあって、平家落人の里として有名な湯西川温泉はこのダムのさらに上流深くにある。
道すがら、ダム湖に沈んだ集落から移転した住民の新築住宅の群れをみる。道の駅もそうだったが、やはり湯西川沿いは紅葉の色付きがよい。ダム堤の高さは119mだそうで、新しく作られた県道 "新" r249はこの高さに登るためにゆるゆるとカーブを描きながら崖上を這っていく。
おお、向こう側にチラリズム的に見えてきたのがダム提だな。
道の駅からはわずか2kmあまりなので、あっさりと到着。ここは管理事務所脇の展望駐車場である。以前の渓谷を知る身としては信じられないような景観だ。ちなみにここは工事中に建設機材やコンクリートを練る施設などが置かれていた場所らしい。
これが湯西川ダムの本堤である。最近の土木工学というのはスゴイもので、河床部に基礎を作ってからわずか1年あまりでこの巨大なコンクリートの壁ができてしまった。これは大型ダムの施工例としては異例の超ハイスピード記録らしい。
どこまで本当かは筆者には知る由もないが、民主党政権になって同時期、同程度の工事進展状況だった群馬県の八ツ場ダムが建設中止騒動で大モメに揉めたことが、工事の急ピッチ化と施工方法の改善に拍車をかけたとの話がある。もし本当なら史上最低の無能政権が残した、ほとんど唯一の技術革新のタネということになりそうだが…はて、これは褒め言葉になっているのだろうか(謎)。
さて湖面の方はまだ湛水試験中らしく、満水時の半分?くらいの水深だった。水没部の樹木と表土は撤去されており、むき出しの岩盤がみえている。水が少ないと何だか過激な坊ちゃん刈りみたいだ。
かつての湯西川の紅葉は、朝霧の時間帯に川沿いギリギリの染まり方を見るのがとても綺麗だった。ダム湖付近ではその肝心な部分は失われている。渓流の錦絵を見たいなら、より上流部を目指すべきなのだろう。
意外(?)なところでは、岩盤を削り取られてモヒカン刈りになった岩山の頭頂部が極彩色になっていた。半分くらいはネタ写真のようなものだが、これはこれで湯西川の新たな風景の一部である。
ちなみにアメダスの気温データをざっと外観すると、標高を同じと仮定して換算すると五十里よりも土呂部(湯西川だとこちらの観測点ほうが近い)の方が1~2℃低い値が出る。山間の僻地ではそれだけ冷え込みが厳しいということである。
…ということは、五十里湖に紅葉狩りにきて色付きがイマイチだった場合、日塩もみじラインに入って標高を稼ぐか、湯西川~川俣方面に移動して冷え込みの厳しい渓谷沿いを行けば、条件のよい場所を見つけられるということになりそうだ。もみじラインは有料道路なので 「俺は通行料金\600が勿体ねぇ!」 という方は、必然的に湯西川温泉コースか川俣ダムコースがお勧めということになる。このあたりは各自の財布の中身と相談して頂ければと思うw
筆者ももう少し時間に余裕があれば湯西川温泉まで足を延ばしたのだが…もう日没が迫っていたので、ここを行動限界と判断して帰投フェーズに入ることにした。
…ちょっと勿体ないけれど、撤退時期の見極めと言うのも山間地を行く際の重要ポイントである。また日を改めて、再アタックすればよいと考えよう。
■帰路
ところでこのダム管理事務所前の自販機は、缶コーヒーの値段が\100に設定されていて貧乏人に慈愛と優しさを提供してくれている。おそらく工事関係者向けのものがそのまま残されているのだろうが、「\100で買える愛」 というは決して馬鹿に出来ず、漢(おとこ)なら設置者の好意に感謝しつつ、ここで一服するのが義務といえよう。
そんなわけで、この時間帯に帰路につくと渋滞にハマることは目に見えているので、いまのうちにゆったりとコーヒー休憩してみた。
…嗚呼、愛ヽ(*´∀`*)ノ
結果的には熊谷の秘密基地にたどり着くまでに4時間以上かかってしまったのだが、まあそこはそれである。
…ということで、本稿はここまでとしたい。
【完】
■あとがき
相変わらずあっちこっちに脱線しながらのレポートでしたが(笑)、今回は筆者的には 「もみじラインの周辺というのは紅葉を見るには本当に "失敗のない路線" だな…」 ということを再認識したドライブでありました。
もみじラインの全長28kmのコースの標高差はおよそ800mあり、時期を選べば紅葉の奔(はし)りから最盛期、晩秋の景色、そしてロープウェイで明神岳に登れば樹氷までを見ることが出来ています。こんな盛りだくさんな見どころのあるコース (しかも首都圏からの日帰り圏内) が、日本にいったいいくつあるでしょう。日塩もみじラインは、この季節の山岳観光路線としては間違いなく国内屈指だろうと思いますヽ(´ー`)ノ
ところで今回の目的のひとつに最低気温と紅葉具合の相関をみる…というのがあったのですが、樹種によって多少の違いはあるものの、移動平均(5day-MA)でおおよそ5℃を下回って数日で見頃になる、という傾向はかなり普遍的に見えたと思います。8℃~5℃のレベルのままだと、色づきは進行するものの赤の鮮やかさが出ないので紅葉としてはパっとしません。これが確認できただけでも、筆者的には収穫の多いドライブでした。
また今年の特徴として、10月後半以降の気温変遷がダラダラと同じレベルで上下していて、季節の進行による低温化が明瞭に見られなかったというのがあります。今年は五十里湖~鬼怒川温泉のあたりがこの影響をモロに被っていたようで、残念ながら赤色の冴えがいまひとつでした。色付きが始まってからこのダラダラ傾向に巻き込まれると明瞭な紅葉色が出る前に葉が枯れて散ってしまうこともあり、少々注意が必要かと思います。
ただし気温変遷にダラダラ傾向があっても、標高の異なる場所に移動して5℃ラインを下回る条件のところを探せば問題なく紅葉を楽しむことが出来ます。平地の定点スポットだとなかなか選択肢がありませんが、山岳地であれば何とでもなる…というのが、今回のレポートでも明瞭に見えています。特定地点がパッとしない色調だからといって諦める必要はなく、ローカルな気温推移を見て見頃の場所を予測すればよいのです。
なお霜が降りたり凍結すると紅葉の色は減退してしまうので、見頃の終わりは最低気温が氷点下に下がるまで…と思えばよいと思います。これがスコーン!と一気に下がってしまうのか、凍らない程度のレベルをキープできるのか…で、特に晩秋の紅葉風景の風情は左右されます。
…まあ、あまりデータに振り回されるのもアレですが、今回わかったことをうまく活用しながら、来年以降の撮影経計画に反映していければと思ってみましたヽ(´ー`)ノ
<おしまい>