2013.10.06 姥ヶ平の紅葉(その2)






さていよいよ牛ヶ首に到着した。…が、あたりはすっかり曇り基調になっている。どうやら雲に追いつかれてしまったらしい。




姥ヶ平の全景もすっかりガスってしまって、ちょっと残念なことになっている。




うーん…雲は山頂にまで達しているか。
ここから先をどうするべきか、多少の思案のしどころだな。




…が、見れば果敢に降りていく人は多い。まあ視界が悪いといってもまったく何も見えないわけではないので、ここは筆者も降りていくことにしよう。うまい具合にまた雲が晴れてくれるといいのだけれどねぇ(^^;)




さて肝心の色づき具合のほうは、東麓側と同様になかなかいい感じに染まっている。雲がかかっているので実質的に霧雨の中にいるような状況だが、まだそれなりに視界は確保できる。




足元のドウダンの染まり方もまさにドンピシャリといったところ。霧雨で濡れると、紅葉の色も一段と鮮やかにみえる。




こちらは楓。8℃-5℃法で見頃判定が出てからざっくり一週間くらいといったところだが、色の乗り具合はほぼ完璧となっている。昨年はオレンジ色っぽい紅葉でいまひとつ鮮やかな赤が出ていなかったけれど、今年は本当に良い条件が重なっているようだ。




ここでいう条件とは主に寒暖の差、昼間の日照、そして適度な水分などの諸条件である。その遠因となっているのは台風の存在で、気象という切り口で紅葉を眺めてみると、実はその恩恵がとても大きなものであることに気づかされる。




前項でも少し触れたけれども、台風のような巨大な大気の渦巻きが通過することで、夏の空気と冬の空気が交互に数日ずつ列島上空に入り込み、大きな寒暖の差を生じていく。ついでに雨と晴天(→台風一過)も同時にもたらされる。これが気温の下がり始める9月から10月にかけてちょうど日本列島の周辺で集中して起こり、紅葉の色づきを鮮やかに演出していくらしい。

※秋の長雨とか晴天時の放射冷却はどうよ、というツッコミもごもっともなのだが、今年は台風通過のタイミングで気温が極端に動く傾向が非常にはっきりと見えている。




そう考えると、日本列島の位置している地理的、気象的条件というのはとても貴重なもののように思えてくる。山を荒らさない程度に通り過ぎていくぶんには、台風というのは日本の秋の風情の形成に欠くべからざる影の役者の一人で、今年はそれが非常にうまく機能したということなのだろう。



 

■姥ヶ平




さて白樺の群落まで下りてくると、まもなく姥ヶ平である。




そんな訳でようやく到着。時刻はまだ9時前で、晴天なら逆光条件で撮影コンディションとしては少々難のある時間帯なのだが、曇天とあっては太陽の向きもさほど気にならない。




残念ながら濃霧(というか霧雨)がスゴイことになっていて、いつもの定番アングルは茶臼岳がホワイトアウト状態でご覧のとおり(^^;) うーん…こりゃ参ったなw




状況が好転してくれるかしばらく待ってみたけれど、どうやら空模様の大勢は変わらないらしい。霧雨もだんだんと本降りに近くなってきたので、これ以上の長居は難しいと判断、周辺状況をそそくさと撮影して撤退モードに入ることにした。

 


・・・ホント、色づきは最高なのになぁ。




撤退間際、楓の小群落に分け入って色づきの良さそうな固体をアップで撮ってみた。姥ヶ平の休憩所付近は割りと雑多な樹種が混生しているのだけれど、やはり鮮やかさという点では楓に軍配があがる。…まあ、こういう雨の紅葉というのもまた珍しきものと受け止めることとしよう。




ここで一段と雨足が強くなってきたので本格撤退開始(^^;)



 

■帰路




帰路はカメラをかばいながら粛々と最短ルートで戻ることにした。沢筋を登っていくと霧 (というか雲というか雨というか) の濃淡がフワァ…と湧き上がっては流れていく様子がみえる。河川の無い砂礫の斜面でも、こんなふうに植物は水分を得ることが出来るのだな…などと、濡れながら筆者は妙な関心をしてしまった。
 


 
牛ヶ首付近まで上がって振り返ると、姥ヶ平は霧の底に沈んでいた。…なんだかまるで御伽噺の世界から生還したような感じがしないでもないけれど(笑)、これはこれで面白い体験だったと思うことにしよう。毎度毎度、ピーカンの晴天ばかりが秋の風情でもないのだろうから(^^;)




ロープウェイの山頂駅まで戻ると雲の塊が過ぎ去って日差しの指す場面もあったのだが、雲海が上がってきていることもあり、今回はこのまま降りることにした。この次に来るときは天候条件がピタリと合うと良いなぁ。

…ということで、今回はここまでの報告としたい。

<完>



 

■あとがき


珍しく霧の中の紅葉を見ることになった今年の姥ヶ平ですが、朝のうちは青空の広がる場面もあり、前日の絶望的(?)な天候具合からみればまあそれなりに黒字決算になったような気がします。8℃-5℃法による見頃の見極めもそれなりに当たったようで、今年は気温の触れ幅が日非常に極端だったことから実は少々不安なところもあったのですが、まあ結果オーライとなって一安心です。




ところでこれ(↑)は姥ヶ平から帰路、雲海の下から見た景色です。雲の下にいると世界はこんな風に見えるのだな…ということで載せてみました。

山を登って雲の上に出れば青空を見ることもできる訳ですが、下界しか知らない人にはそれがなかなか分かりません。だから雨が降ると大多数の観光客は最初から諦めて出かけるのをやめてしまいます。




しかし諦めずに登っていけば、こんな雲海を見ることもできるわけです。諦めずにチャレンジした人だけが見ることのできる景色。…こういう風景を、これからも見て行きたいものです。

さてここで私事を少々。本来なら今年はこのチェッカーで紅葉時期の見極めを行いながらあちこち写真紀行をしようと思っていたのです。しかし急な仕事の都合で栃木に戻ることとなり、熊谷の秘密基地も引き払わねばならなくなって、10月は身辺整理やら引継ぎやらで紅葉狩りどころではなくなってしまいました。せめて年末区切りだったらもう少し充実した秋になった筈なんですけどねぇ…( ̄▽ ̄)

そのような次第で、今後は那須塩原市の拠点に戻りますが、生活環境が整うまで更新ペースが遅くなるかも知れません。まあ元々それほど頻繁に更新している訳でもないので期待している方も居ないと思いますけれども(笑)、熊谷で仕込んだネタもまだまだ大量に塩漬けになっていたりしますので、頃合をみてぼちぼち記事に起こしていけたらと思います。

<完>