2016.02.06 湯西川温泉かまくら祭り(その3)




■ 蝋燭点灯の頃




さてやがて日も沈んで明かりが灯る時刻となった。トワイライトの温泉街はなかなかいい雰囲気になっている。…これでもう少し雪があったら最高なのだが(^^;)




雪だるまとセットになったミニかまくらにも灯が入っていく。




それにしても最近の雪だるまはバリエーションが増えたなぁ…(^^;)




平家集落方面もぼちぼち。おや…いつのまにか一軒が更地になっている。古い建物はどんどん更新されていってしまうな。まあ人が住んでいる物件だから仕方のないところだけれども。



見れば慈光寺のかまくらにも灯が入ったようだ。あちらは墓地のほうにむかって蝋燭の炎が並ぶので、宵の口のうちはともかく日がとっぷりと暮れると怪談の雰囲気になってしまいそうでちょっと怖い(^^;)



 

■ 平家の里ふたたび




さてかまくら祭りのメイン会場となっている平家の里はどうなっただろう。昼間のチケットで夜も入場できるのでさっそく入ってみることにしよう。




おお…明かりが灯ると映画のセットみたいでいい感じだ。ここはただのチケット売り場なのに出来過ぎのような景観になっている。




今回は新しい試みとして古民家+イルミネーションというコンセプトで会場が造られているらしい。筆者は日本家屋にはあまりキンキラ系の装飾はどうかと思うのだが、祭りの実行委員会はより良いイベントを志向して試行錯誤しているのだろうから、これはこれで味わってみようかと思う。




おお平家塚だけはブルーの照明か。一応場所毎の演出は考えているのだな。これだとスキー場のライトアップみたいだけど、道路沿いの照明(※平家塚の向こう側は道路である)がブルーに統一されているのでそれに合わせているのかもしれない。




かまくらは暖色系の伝統的な電燈色(残念ながら蝋燭ではない ^^;)で、これは色彩設計的に大正解。やっぱり雪といえばこの雰囲気でないと落ち着かない。





電飾もクリスマスデコレーションのような極彩色ではなく、基本的に暖色系でまとめられているようだった。これはそれなりに調和しているように見える。少なくとも違和感はない。




思うに、やはり人間の視覚と言うのは炎の色とか朝夕の太陽光にちかい色に親和性を感じるのだろう。




川に見立てた白色LEDだけはちょっとしょぼくてイケていないけれども(^^;)、周囲の観光客の会話を聞いていると 「今風のライトアップってこうなのかねぇ」 という感じで反応はそう悪くなさそうだった。筆者はもう少し自然なほうが好みだが、世間的にはイベントとしてのライトアップはこのくらいの味付けのほうが好まれるのかもしれない。




そのまま、少し奥の赤間神宮のあたりまで行ってみた。



こちらはライトアップといえばライトアップなのだが、普通の照明といった感じだな。

見ているとなぜか神宮にお参りする人がとても多いのが面白い。もしかすると特別に信心深い人たちばかりが来訪しているのかもしれないが、ランドマーク効果も効いているのだろう。奥まったところに何かがあると、人は行ってみたくなるのである。





さて少々時間を使い過ぎたかもしれない。日が暮れて凍り付いたのかザクザク感を増してくる足元の雪圧を感じながら、ゆっくりと戻った。



気が付けばいつのまにか周囲は真っ暗になっている。空に残照ののこる宵の口のうちに沢口会場を見てみたかったのだが…まあいいか(^^;)  風景に時を奪われるのは悪いことではない。そいつはたぶん心の豊かさとか精神的な余裕を反映していて、何も感じないままスタスタ去ってしまうより遥かにマシなのである。…ここはひとつ、あわてずに、ゆるゆると行こう。



 

■ 沢口河原




平家の里で古民家+かまくらを見た後は、ミニかまくらが並ぶ沢口の河原を目指していく。距離にして約500m、一本道なので迷うことはない。歩いて十分少々といったところだ。

道路は電飾の明かりで照らされている。青とか赤の照明は古民家にはあまり合うとは思えないけれどもこういうロケーションならありだと思う。





途中、愛をささやくと成就するらしいハートのトンネルに遭遇(実は毎年設営されている)。

毎度毎度毎度毎度毎度思うのだがここに入っていくのは男女のカップルよりもおっさんの集団の方が圧倒的に多い。世の中の愛の形はいつのまにか多様性が進んでいるようだが、それってどうよ的なツッコミどころに満ちているのが何とも。




やがてイルミネーション区間が尽きて沢口会場に到着する。このアングルからは見えにくいけれども、一段下がった雪の河原にミニかまくらが並んでいる。



おおこれだよ…! というか人大杉っ!(^^;)

今年は暖冬のお蔭で設営が遅れ、1000基作る予定のミニかまくらは現在(=2/6)完成したのが800基で、予定より2割ほど少ないという。しかしそれでもとりあえずはサマになっているので細かいことは気にしないで楽しもう。




ミニかまくらとは高さ50cmくらいの雪洞で、地元のボランティアが無償でせっせと設置しているものだ。中には風よけの樹脂コップに蝋燭が入って置かれている。ひとつひとつは単純なつくりだが数が多いので労力は相当なものになるだろう。そしてこれが、毎日点灯されているのである。



それにしても観光客のほぼ全員がデジカメorスマホを持っていて黙々と写真を撮っているのがいかにも現代風だ。…いや筆者もそのうちの一人なので笑えないのだが、まあそこはそれw



道端には蝋燭だけ並べた一角もあり、地味に撮影スポットになっていた。



斯くいう筆者も一口乗ってみる。ふむ…蝋燭を並べただけなのに、なにかの素材に使えそうな絵になったぞ。いい感じだ。



写真で見ただけだとこの景観の雰囲気はなかなか伝わらない。蝋燭の光はゆらゆらとゆらめいて、電球やLEDのような人工照明とは明かりとしての質がまったく異なっている。これが1000基ぶん(本日は800基だけれども ^^;)、自然風景の中に並んでいる。このゆらめく光の列が、なんともいえない美しさなのである。



しばらく待っていると、手前の人ごみが減ってくれた。なかなか観光ポスターのようなベストな条件にはならないけれども、ひとまず目標としていた景観はGET。最近はこれが日本夜景遺産なる観光スポットとして認定されたのだそうで、できれば1000基、いやもっとプラスアルファしたものも見てみたくなった。


この後も続々と観光客の列はやってくる。時刻はまだ18:30…宿泊組が食事を終えて散策にくるのがこれからだろうか。筆者は日帰り組なのでこのあたりで撤収しよう。



 

■ エピローグ:100円の幸せ




さて駐車場まで歩いて戻り、缶コーヒーの一本も味わってみようと自販機をみると…やや、観光地だというのに100円メニューがある! 素晴らしい!




クルマ投資で一挙に冷え込んでしまった筆者の財布事情に、この暖かさはたまらなく有り難い。ああ…これで明日も生きていける。この素晴らしい世界に祝福を。

そんな次第で、今回はここまでとしたい。

<完>