2020.10.07 姥ヶ平の紅葉 (その3)
■ 紅葉の木々
さてここからは、四の五の言わずに紅葉の写真を並べてみよう。何度も書いているように今年はとにかく葉の状態が良好で、いつもの年なら育毛剤が欲しくなるような薄毛具合(なんだそれw)の木々がとてもふさふさと葉を茂らせている。
そんなふさふさ樹木がこれまた武田信玄の赤備えの如く軍団を組んで並んでいる訳で、ここまで赤尽くしの景観が見られる地域というのも珍しいのではないかな。
実はこの日、明け方の最低気温はほぼ0℃くらいであったようで、3℃未満の累積日数3日以上という条件が成立していた。筆者が暇潰しをしていた数時間のうちに最後の一押し的に色づきが進んだ……のかどうかは良く分からないけれど、タイミングとしては非常に良かったのではないかな。
さて姥ヶ平の広場まであと200mくらいの所まで降りてきた。
実はこのあたりで振り返ると茶臼岳がいい感じでカメラに収まる。
実はこの付近で見る茶臼岳が一番絵になるのではないかな。
■ 姥ヶ平
さてそろそろ砂礫の広場が見えてくる。
ようやく到着。時計をみるとちょうど正午であった。 何度見てもまるで庭師が手入れしたような景観だけれど、これは自然に出来上がったものだ。雨天時には周辺の山から流れ下った水がここで池のように滞留し、やがて土中に沁み込んでいく。
その水が運んでくるのは火山灰と軽石の混ざった砂礫で、栄養分がほとんど無いので樹木は育たない。では周辺の木々はどうやって繁茂したのかというと、地衣類や高山植物が保持しているほんのわずかな土壌をよりどころに根を張っているのである。だから根元に背の低い高山植物の絨毯を抱えている木々が多く、これがまた庭師が手入れしたようなコンパクトさで円形にまとまっている。せっかく姥ヶ平に至ったのなら、ぜひとも見て頂きたいところだ。
さてそれでは定番の風景を撮影してみよう。おお、ちょうど青空がいい感じだ。
実はこのとき、もう頭上には次の雲海がやってきていたのだが、まだぎりぎり日照は得られていた。朝方の濃霧の状況を思えば奇跡のような天候だな(^^;)
せっかくなので噴煙と紅葉の対比をもう一枚。 ちょうど昼時でもあるし、ゆったりと山容を眺めて休憩をしてみた。まあいくら台風が接近中とはいえ、コンビニで買ったパンをかじりながら一服するくらいの余裕はあるだろう。
その後は、そそくさと周辺の紅葉の木々を撮りまくりのにわかスナップタイムとなった。
木々の色づきの具合にもばらつきはあるのだが、鮮やかな個体はほんとうに驚くような色を見せてくれる。
カエデやドウダンの赤と美しい対比を見せてくれる黄色い葉は、ミズナラやブナの仲間であるらしい。那須の山々は赤く染まる木々が多く黄葉は少数派なのだが、いくらか色相の違う樹木が混じったほうが絵的には面白い。
こんな鮮やかな色彩が、人工林や庭園ではなく自然の風景として成立しているのだからなんとも素晴らしい。
■ 撤収
さてそんな紅葉風景を眺めていられたのもわずか30分程度で、にわかに雲が増え始め、日照は遮られてしまった。山の天気は変わりやすいとは言うけれど、どうやら筆者は奇跡的に最高の時間帯に姥ヶ平にやってきて、30分で命運を使い果たしたらしい(笑)
もう少し時間があればひょうたん池の周辺も散策してみたかったけれど、天気予報では間もなく雨になると言われている。ここはもう、潮時とみるべきだろう。
そんなわけで撤収開始。
その間も雲はどんどん流れてきて、ついに牛ヶ首まで戻ってきたところで低層雲に追いつかれてしまった。おいおい、さっきまでの青空はどこに行ってしまったんだw
クルマを停めた位置関係もあるので、ロープウェイ方面ではなく今朝がた登ってきた朝日岳方面から降りることとした。 大噴の付近まで撤退して振り返ると、姥ヶ平は雲に覆われて見えなくなる直前だった。
峰の茶屋跡避難小屋付近はもう完全に五里霧中。やれやれ。
駐車場まで戻ると、朝には満車だったはずのクルマが随分と減っていた。ということは途中撤退組が実は結構多かったということだな(笑)
愛車に戻って缶コーヒーで一服していると、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。 気象庁の予報精度の凄さにはちょっと感心してしまうな。メッシュ予報ってメチャメチャ使えるじゃないか。これだけピンポイントに天候のスキマを狙って成功した撮影日って近年あったっけ(^^;)
そんな次第で、なにか気の利いたまとめが出来ればよいのだけれど思いつかない(笑) まあ当初の目的は達成できたことだし 「本日のミッションは黒字決算で完了!」 と結論付けて、今回のレポートは終了することとしたい。
【完】
【あとがき】
え~~ひさしぶりに紅葉レポートを書いてみました。今回は非常にタイトな天候条件で文字通りヒットアンドアウェイ的なアプローチとなり、近年ではちょっと珍しいケースです。まあ台風接近中に山に向かう判断が適当といえるかどうか……というツッコミどころはある訳ですが(笑)、余裕は見たうえでのトライなので決してムチャなことをしている訳ではない旨、申し述べさせて頂きたいと思います。
こういうタイムスケジュール管理は、旅の情緒という点では場合によっては無粋(笑)になってしまう場合もありますけれども、"光線の条件の良い写真を撮りたい" というニーズに対しては重要です。せっかく出かけるのであれば雨天や曇天より晴天が欲しいケースは多いですし、多少の創意工夫で狙えるなら狙ってみるべきでしょう。…といっても、今回の内容は単に 「途中で暇潰しをしました」 というだけですけれども(笑)
余談ながら今回接近していた台風14号は、日本上空のジェット気流の気まぐれによるのか太平洋高気圧の気合が足りなかったのか、途中でふらふらと迷走をはじめまして、結局関東直撃コースから外れて太平洋方面に流れていってしまいました。その後も台風は東日本には一個も上陸しなかったので、今年の東日本は紅葉の当たり年として近年にない恵まれた環境になったと総括してよろしいかと思います。
それもこれも、筆者の日頃の行いが……などと言い始めると運勢が下がりそうなので(ぉぃ)、このへんでお開きにしておこうかと思います。願わくば、世の善男善女の皆様に天気の神様のご加護があらんことを。
<おしまい>