2022.01.01 初詣:那須温泉神社
まだまだ続くコロナ禍の新年に初詣を敢行して参りました (´・ω・`)ノ
さて令和4年の新年は那須温泉神社の初詣をレポートしたい。西暦で言えば2022年で、2019年末に出現したCOVID19なる新型コロナウィルスが流行し始めてから実質3年、年跨ぎでカウントするとなんと4年目に入る。ウイルスは変異に変異を重ねて、すでに第6波がやってきており世界の感染者数は4億5000万人、死者数は累計600万人ほどになった。しかしそれで人類が滅亡する様子は無さそうで、既に新たな日常風景の一部となってしまった感がある。
とはいえ、TVも新聞もコロナ、コロナ、と喧(かまびす)しいのは相変わらずで、お蔭で各地の神社では初詣も絶賛縮小中、参拝に訪れても 「無人でした」 というオチになりそうな気配が濃厚なのである。そんな次第で、まさか中止にはならないだろう、というメジャースポットとして今回は那須温泉神社に出かけてみたのであった。
■ 雪の中をGO!
ではさっそく出かけてみよう。この年末年始はちょうど寒波が到来して全国的に雪模様であった。那須もひろく雪が降っていて、道路は真っ白になっている。さすがに交通量も少ない。
那須湯本の温泉街に入る頃には、積雪もだんだんと深くなって15cmほどになった。クルマの轍(わだち)の跡がほとんど無いところを見ると、こんな天候の大晦日にわざわざ登ってくる人は少ないとみえる。
ほどなく神社前の駐車場に到着。クルマは何台か停まってはいるが、雪を被っているところをみると今しがたやって来たような雰囲気ではない。温泉の宿泊客だろうか。
ところで神社前の駐車場近傍は特徴的な緑色の光で照らされている。今回はネタも少ないのでちょっとこの光に注目してみたい。実はこの緑色は水銀灯に特徴的なもので、同じワット数だと白熱灯より明るいので街灯など明るさのほしい場面で古くから用いられてきたものだ。ちょっと歴史の古い商店街や公園にみられる。
観光協会の建物内は昼光色の蛍光灯で、カメラの色補正との相性は比較的よい。蛍光灯の普及は高度経済成長後のことだが、とくに室内灯は食品の色がおいしそうに見えることが売れ行きに直結したので、スペクトル分布が入念に調整されて演色性が向上している。最も多く生産され値段がこなれているのは昼白色タイプで、太陽光に近い見え方になる。
一方、伝統的な白熱灯が使われている灯篭は、色温度が低めなこともあってオレンジ色に写る。フィルム写真ではこれが結構極端に出て、ある種のノスタルジー的な演出になっていた。昔ながらの篝火の色調にもちかく、筆者的には神社仏閣の夜景にはこういう色味が合うと思っている。
■ 参道へ
では神域に踏み込んでみよう。 ……まずは一乃鳥居。
写真では分かりにくいかもしれないが、雪は結構つよく降っている。暗い所でスローシャッター気味にすると見えなくなるだけで、頭の上にもカメラにも容赦なく降り積もっていく。
初詣客はこの雪を避けるために社務所に固まっているようだ。といっても人数は十名少々くらい。コロナ禍に雪とあっては、やはり人の出だしもいまひとつといったところかな。
筆者はかまわずに進んでいくことにする。これは二乃鳥居。
■見立神社
二乃鳥居を越えたところで、ちょこっと脇道に逸れて見立神社に立ち寄っていくことにする。ここは湯本の源泉を発見した狩野三郎行広を祀っている古社で、現在の温泉神社の宮司の家系のご先祖様にあたっている。この家系は源氏や平氏どころか藤原氏よりも古く、なんと1400年も続くとんでもない家系だったりする。
そんな古社に参拝。現在の時刻は 23:40 、西洋式の時計ではまだ大晦日ということになるけれど、神社の時を刻む十二時辰ではもう元旦になっているので初詣をしても問題ない。とりあえずは筆者の武運長久と日本国の安寧、それに財布事情の好転あたりを祈願しておこう。
その後は主参道に戻って再び進んでいく。
やがて三の鳥居。ここから先が神域の中心部だ。
■ 境内と光のお話
さて鳥居を過ぎて拝殿につながる登り段が見えてきたが……ん? なんだか照明の色味がヤケに白っぽいな。
などと思ってよく見ると、なんと白色LED照明ではないかーーっ!
ええい、ブルータスよ以下省略。
さて那須温泉神社に関しては過去の記事でさんざん由緒やら縁起については書いているので二番煎じのような話は控えて、せっかくの機会であるから神社とLED照明について少しばかり書いてみよう。
……というのも、最近は神社仏閣でもこのLED照明が急激に増えてきて、しかも昼白色系ばかりが設置されるので雰囲気がとても残念なことになっているのだ。もちろん神社の中の人に悪意などあろう筈はなく、単にリーズナブルな価格で売っている照明灯を設置しているだけに相違ないのだが、しかしその選択眼にはいささか……どころではない問題があるように思える。
そんな次第で、初詣ネタとしてはちょっとアレな感じはするのだけれど、ここで光の色味、つまり色温度の話をしてみたい。
技術的な話を始めると長くなるので、ここではホワイトバランスを温度で表すという作法のみ知っていればいい。大雑把に赤みが強い=色温度が低い、ちょうど真っ白=昼間の太陽光並み、青みが強い=色温度が高いという関係があり、夜空に輝く星の表面温度と色味の関係と同じだ。単位はK(ケルビン)が使われる。これが異なると、"白" の見え方が異なってくる。
デジカメの標準は5000~5500K(日中の太陽光に相当)、PC画面(Windows系)は6500K、地上波TVは9300K(実はTVの "白" はかなり青っぽい)くらいの数値になる。朝日や夕日、白熱電球では3000Kくらいで、本来白いものがかなり黄色味~赤味を帯びて見える。夜の篝火や燭台などではもっと低く2000Kくらいになる。
※この温度は黒体を加熱したときにだんだん赤みを帯びてやがて白く輝くようになる過程の表面温度を指す。鉄を熱するとやがて赤熱し、白色に輝くようになった末に溶けて銑鉄になる様子を想像すれば分かりやすい。
では問題?の白色LEDの色温度はというと、6000~7000K くらいになっている。これはPC画面とほぼ一緒で、ホワイトバランスはやや青み掛かった白になる。
なぜこの数値なのか、については、もちろん理由がある。ちょうどこのくらいの照明環境に置かれると人間の自律神経の興奮は高まり、集中力、作業効率がアップするという生理的な作用があるのである。
つまりオフィスや工場などでこの色温度の照明をつけると、従業員はギンギンに覚醒し、労働生産性が極限まで高まって企業は儲かることになる。パチンコ屋では客が 「ヒャッハー!」 と興奮して景気よく玉を打ってくれるし、コンビニでは購買欲が高まって余計なものまで買ってくれる。 そんな魔法のような作用が白色LEDには備わっている。
一方、電球色の光(3000~4000K)は精神をリラックスさせ、休養したり、思考を深めたり、創造性を誘発するのに向いているとされる。蝋燭やランプ、提灯、キャンプファイヤー、囲炉裏や暖炉などの光がこの条件に近い。
このくらいの色温度は飲食店や宿泊施設で採用される照明に多く、ちょっと雰囲気の良いデートスポットもこのくらいの照明で演出されている。宗教施設もどちらかといえばこちら側になるのだろう。
これらの施設は、追い立てるように何かをさせることを目的とはしていない。むしろ精神を休めてゆったりとした時間を過ごすべきところで、ゆえに色温度の高すぎるギンギンな照明は似合わない。 神社仏閣が白色LEDで照らされているのを見て筆者が違和感を感じる所以(ゆえん)である。
コロナが流行する前、いや東日本大震災で放射能騒ぎが広がる前は、神社仏閣で初詣といえば篝火やお焚き上げの炎の色が建物を照らし出して、いい雰囲気を醸し出していた。
ちなみに上(↑)に示した篝火は、震災以前の初詣の風景だ。色温度は電球よりも低く、おそらく2000Kくらいではないだろうか。
昨今はさまざまな理屈をつけては 「何かを燃やす」 という行為が制限の憂き目にあっている。 年越しの風景の中で、篝火やお焚き上げの炎が消えていき、LED照明で青白く照らされた境内が "普通" となってしまったら、すこしばかり寂しい気がする。
ちなみに今年、篝火は無かった。
いろいろ事情はあるにせよ、まあそういう時代なのだろう。筆者は神社のオーナーではないので何かを要求する立場にはないし、気前よく最適照明を提供できる財力もない。 そういう時代が訪れるなら、それはそれで適応していかねばならないのだろうな。
■ 年越しのとき
さてそんな蘊蓄(うんちく)を語っている間に午前零時が迫ってきた。集参した氏子さんも参拝客も少ないけれど、それでもゼロではない。
見れば拝殿の内部は伝統的な色温度3000K前後の照明光であった。やはり新年を迎えるときはこうでなければ。
ちなみにコロナのおかげで参拝客が少ないことは事前に予想されており、拝殿脇の社務所は閉鎖されていた。縁起物を入手したい人は二之鳥居前の社務所(本所)に来いということらしい。まあこれは致し方なし。
やがて、ドーン、ドーン…と太鼓が鳴り、2022年がやってきた。
列に並ぶまでもなく最前列にいた筆者は、ささやかに幾許かの賽銭を献上し二礼二拍手一礼。今年も武運長久なれ、懐具合に幸あれ、日本の敵は滅亡でいいよ、と祈願してみた。
さて恒例のお御籤は……というと、むむ、中吉か。
コロナに関しては "自己の生命力を信じよ" とあるのでたぶん大丈夫だろう。方角は西がよいそうなので、コロナが明けたら関西方面にでも旅行してみようか。
などと思っているうちに雪が激しさを増してきた。これは早めに撤退したほうが良さそうかな。
そのような次第で、今年も宜しくお願いいたします♪
【完】