写真紀行のすゝめ:ハードとか


交換レンズのいろいろ


今回は交換レンズについて書いてみます。デジ一眼を最初に購入する場合、35mm換算でf=50mmを挟んで前後にいくらか余裕のあるズームレンズ(28-100mmくらいが多い)をセットにする場合が多いと思います。このクラスは俗にいうポートレートレンズというカテゴリで、ひとまず何でも無難に撮ることが出来ます。

そのうちこれで飽き足らなくなってくると、そろそろ交換レンズの選定時期でしょう。人によっては次から次へとレンズが欲しくなって "レンズ沼" にハマることもありますが(笑)、まあ趣味の世界の話ですし財布と相談のうえホドホドに楽しめば良いと思います。



単焦点とズームレンズは、どちらが良い?


さて一眼レフのレンズの種別は何通りかの分け方がありますが、まずは単焦点かズームかという分けかたがあります。



単焦点レンズはその名の通り焦点距離が固定されたレンズです。ズーム機構がない分その焦点距離で画質が作り込まれていて、なおかつ明るいのが特徴です。被写体をアップにしたりロングにしたりする際は、撮影者の方が寄ったり引いたりして動きます。画質優先派の人は焦点距離の異なる単焦点レンズを幾つも携行して、交換しながら撮影をします。お陰で荷物は増えますが、単焦点派の方々はそんなことは織り込み済みで文句はいいません。

焦点距離は35mm換算でf=50mmがほぼ人の目の視野角に相当すると言われ、50mmレンズは "標準レンズ" などとも言われます。一般にはこれより短焦点(数値が小さい)側が広角、長焦点側が望遠になりますが、商品カテゴリとしては28mm以下を広角レンズ、100mm以上を望遠レンズと呼称することが多いです。

ズームレンズは文字通りズーミングの出来るレンズです。焦点j距離を変化させた場合の収差のバランスをとるためレンズの枚数は単焦点レンズより多く、そのために一般に像は暗くなり、画質もテレ側(望遠)、ワイド側(広角)では収差が大きめになります。ただし携帯性の面では複数の単焦点レンズを持つよりもコンパクトになり、また足場の良くない場所でもズームで構図を調整できるなど取り回しはラクになります。大抵のデジ一眼でセット売りされているのは中望遠のズームレンズです。

……で、「どちらもそれぞれだよネ」 で済ませてしまうのは簡単なのですが、写真紀行に使うなら圧倒的にズームレンズを推しておきたいと筆者は思います。それも "これ一本あれば大丈夫" 的な高倍率系のズームレンズです。

望遠レンズは一昔前は 「せいぜい3倍ズームくらいまでにしておかないと収差(≒理想的な結像状態からのズレ)が良くない」 などと言われましたが、最近は設計の改良と加工技術の進歩によって高倍率レンズでもそこそこ良い画質で撮影できるようになっています。筆者は最近は11倍ズームのコンパクトなレンズを常用しており、ほとんどこれ一本で撮影を済ませています。取材旅行は結局あちこち歩き回りますから、荷物は軽いほうが良いのです。





望遠レンズ


さて次は焦点距離に応じた分類で見ていきます。まずは望遠レンズです。



望遠レンズは単にアップで写ります、という以上に望遠圧縮で面白い絵が撮れます。作例↑は f=300mm(35mm換算でf=450mm)で捉えた遠景の山ですが、手前の住宅との対比で 「でっかいぞ感」 が強調されています。紀行写真としてはこういう "どアップ" で見せる構図はよく使います。特に山などは、近づきすぎると空気層の厚さが稼げず青さが失われてしまうので、ある程度の距離をもって望遠で撮ったほうがカッコイイ写真になるのですよね。

風景というと猫も杓子も 「広角が良いのだ」 と言われますけれど、案外そうでもありません。筆者の場合は望遠のほうが出動回数は圧倒的に多いです。(高倍率ズームを使うようになってからはそちらのテレ端で済ませてしまう場合もよくありますが…w)




広角レンズ


広角レンズは標準レンズに比べ焦点距離の短いレンズです。広い範囲を写し込めるので風景の広さを表現するのに適しています。…が、案外扱いが難しいところがあります。



これ↑は f=10mm(35mm換算でf=15mm) で取った公園の風景です。パースがぐわわっと効いて遠近感が出るため面白い写真が撮れるのですが……正直なところこういう写真ばかりズラっと並ぶと、写真紀行としては奇をてらい過ぎのような感がありますネ。




こちらは宮古島の平安名岬です。さきほどと同じレンズで撮っています。一枚絵で遠近感を強調するときにはたしかに効果がありますよね。

しかしやはり実際に使ってみると思ったほど出動回数が増えません。人工物が画面の端のほうに入ってきたりするとパースが効き過ぎて 「なんだこりゃ」 な絵になってしまうこともしばしばです。……そんな訳で、筆者的にはちょっと誤算の大きな買い物だった気がします(笑)




マクロレンズ


マクロレンズは接写用のレンズです。望遠レンズでもマクロモードのあるものがありますが、どうしても遠くから被写体を捉えることになるので、取り回し的にはやはりマクロ専用のものを使ったほうが撮影はラクになります。花や昆虫を撮る人がよく使います。




作例↑は f=40mm(35mm換算 f=60mm)で撮った紫陽花のアップです。使い道によっては面白い絵が撮れ、草花のアップなどはナカナカ大した描写力を示してくれます。ただし接写はピント出しが非常にシビアで、花はちょっとした風でもふらふらと動きますから撮影は意外と難しいです。

紀行写真としては……やはり接写の生きるシーンといのはそれほど無いので、出番は少ないです。単にネタ写真的な接写をしたいだけならコンデジのマクロモードを使ったほうが取り回しが良かったりして、出かけるときに 「今日はコレを持っていくべきか?」 と悩むことがあります。




◆結局のところ、望遠、広角以外は実はあまり使い道がない


さてレンズの紹介などを始めると、魚眼レンズとかPCレンズなど変り種の記事を書きたくなってくるものですが、筆者はばっさりとカットしようと思います。……というのも、芸術性を追求したり建築関係の仕事でもしていないかぎり、こういった外連(けれん)味のあるレンズを使うことはほとんど無いのです。

接写系の写真を撮る人にはマクロレンズなどは選択肢として 「あり」 だと思います。でも自分でいざ買って使ってみると、やはりというか……案外使わない(笑) このあたりは人によってイロイロでしょうけれども、ボディとセット売りしている中望遠系のズームはなかなか侮れず、案外いいところを突いてきているんだな……ということが筆者には巡り巡って実感されています。高倍率ズームなどはそれを強化した商品群ともいえますが、旅に持っていくレンズとしては非常に有益だと思います。

……ということで、八方美人的な記事は書いていてつまらないので正直な使用実感を書いてみました。レンズメーカーさんには怒られそうですけども(^^;)