2006.0604 南月山のミネザクラ(その3)



 

■日の出平~南月山へ




さてそんな訳で日の出平をゆるゆると行く。

ところで、日の出平をちょっと遠景からみるとこんなふうに見える。山岳地で 「○○平」 というのは、山あり谷あり・・・という地形のなかで部分的に平地になっているところの一般名称といっていい。那須では姥ヶ平、清水平などが同じ類型にあてはまる。ここでは背の高い樹木がないので平らな地形がいっそうよくわかる。




その日の出平から南月山に至る稜線に、若干低くなった部分がある。ちょうど風の通り道になっているところで、地形は風化し、樹木もほとんど生えていない。上の写真では風は左から右へと抜けていく。




こんなところでも植物が生えているから不思議だ。

これは文字通りのハイマツ。この写真の向きでは風は右から左に抜ける。根を張っているのは画面右端で、幹は上に伸びることができず地面に張り付くように成長しいている。無風の環境だと10mほどに成長するというが、このあたりでは大きくても2m程度のものが主流のようだ。




日の出平を過ぎると尾根の向こう側がみえてくる。沼原湿原方面をみると雲海が広がっていた。




登山客が休憩していたのでちょっと借景。人がゾロゾロいると絵にならないけれど、一人、二人程度を画面にいれ、遠景と対比させると実は風景のアクセントとして結構使えたりする。




そうこうしているうちに山頂が見えてきた。




ここが山頂である。ちいさな祠が祀られていた。

ロープウェイからだと平坦な道なのであまり登山という感じがしないが、戦前の 「オール徒歩」 の時代はロープウェイはもちろん、クルマの通れるボルケーノハイウェイなども無かった。この山頂の神社は、銘によれば現在の祠は昭和5年の作とある。この時代だとロープウェイはまだ無いから人力で湯本から持ち上げたということになる。……エライ話だな。




その祠の脇には、低木ながらシャクナゲと思わしき花が咲いていた。茶臼岳の荒涼とした山容をみていると感覚がちょっとズレてしまいがちだけれども、本来南月山(1775m)程度の標高の山ならこういうツツジ科の花が普通に咲いていておかしくないのである。

※茶臼岳は火山活動で植生が定期的に破壊されるのと、おもに冬季の環境の厳しさから、植物相が標高2500m級の山とほぼ同じになっている。




■迫りくる雲海




さてここから先は黒尾谷岳まで登山道が続いているが、隣の黒尾谷岳は雲海に沈んでいてちょっと歩いていくには微妙なところだ。上空からみている分には "雲海" だが、一度あれに飲まれてしまうと濃霧の中で視界は効かない。霧だけならまだしも、雨だったらちょっと困る。




…ん? そういえば、雲海の高さが少しずつ上がってきているようだ。

一般に、日が高くなると気温も上昇し、雲海は高さを増してくる。この様子だと飲まれる前に引き返したほうが賢明そうなので、南月山山頂を極めたところで帰投フェーズに移行することにした。




日の出平あたりまで引き返してくると、うわ……雲海が姥ケ平を飲み込もうとしている。




牛ヶ首を越えて、ロープウェイ駅を目指す。本当なら今日は朝日岳ルートでマターリと下って行きたかったところだけど、濃霧+雨で撮影機材をやられるのはちょっとアレだな……と判断した。そうこうしている間にも、雲海は静かに迫ってくる。




さっきまでいた南月山の山麓を、雲海がほわわ~んと乗り越えてくる。




ロープウェイに到着したときには、山頂駅そのものが雲に飲まれる直前だった。いやーとにかく間に合った(^^;)




ロープウェイで山麓駅側に降りると、小雨交じりの完璧な濃霧だった。もう少し天上界気分を味わいたかったような気もするけれど、まあ良い潮時だろう。




帰り際に八幡のツツジ群落に立ち寄ったけれど、雨天+開花ピークは過ぎてしまったっぽいのでそのまま下山した。とりあえず、春の花を追いかけるテーマとしては一区切りとなったかな。


<完>




■おまけ




くっきりと残る腕時計の跡。沖縄でもほとんど焼けなかったのに、たった半日でこんなになってしまいました・・・山の日差し、あな恐ろしや _| ̄|○