2008.07.27 富士山:五合目までヌルいアタック (その2)
■ 2日目
朝がやってきた。昨日の天気予報では曇天と予想されていたのだが、超大ハズレの快晴である。 もちろん筆者にとっては好ましいことなので予報官氏を非難したりはしない(笑)
宿泊したペンションの庭先には百合(ゆり)が咲いていた。ちょうど見頃を向かえていてシャキっとしている。…いいねぇ。
さて宿の主人氏によると 「この天気では観光客がどどっと押し寄せてくるだろうから早めに出発したほうが良い」 とのこと。一見道路が空いているように見えても富士スカイラインはドン詰まりの一本道である。構造的には那須街道と一緒で、いったん終点の五合目駐車場が一杯になってしまうと、脇道/抜け道がないだけに後続のクルマは猛烈な渋滞になって身動きが取れなくなるらしい。朝食を30分ほど早めに用意してくれたのでありがたく頂き、7:30過ぎに出発した。こういう配慮をしてくれる宿は、いい宿だ。
本日はシンプルに富士スカイラインで五合目を目指し、ちょこっと徒歩で登山道をさまよって引き上げるという行程を予定している。本当はもう少し攻撃的に行きたいところだけれど、まあ家族サービスが主目的なので無理は御法度である。…せっかくの晴天だけれど、これは致し方なし。本気で攻めるなら一人旅で来なければならない。
山中湖半から富士山をみると、これまたスーパークリアーな絶景だった。
典型的なコニーデ型独立峰で裾野の形も美しい。さすがは日本を象徴する山だなぁ…
山頂をアップで撮ってみた。登山道が幾筋も走っているのがよくわかる。昨夜山小屋の明かりが点々と見えたのは写真では山頂から右下に下る登山道で、これは富士吉田市の浅間神社(せんげんじんじゃ)までほぼ一直線に続いている。浅間神社の奥宮は山頂にあり、ご神体は富士山そのものを祀(まつ)っている(※)。…そしてこの登山道の本質は、実は神社の参道なのである。
もうひとつ余計なことを言うと、富士山の八合目から上は登山道を除いてほぼ全域が浅間神社の境内となっている。日本の民間信仰の特徴として山岳信仰の存在が指摘されるが、"霊峰" 富士も例外ではない。江戸時代には全国に富士講(富士山を信仰する教団のようなもの)が広まり、富士山詣でがブームになった。当地まで行けない信者のためには富士塚(模擬的に土砂を積み上げて山にしたもの)が作られ、その幾つかは現在でも存続している。
※浅間神社の祭神は浅間大神と木花咲耶姫である。浅間大神とは富士山の神霊を擬人化したもの。木花咲耶姫は記紀神話に描かれる山の神=大山津見の娘で、イザナギ/イザナミの孫にあたる。全国にみられる "山の神=女性神" の伝承の元になっているものだ。
…と、あまりゆっくりと眺めているわけにも行かないので早速出かけてみよう。
みれば遠くから雲が迫っていているな。これだと晴天はいつまでも続かないとみるべきか。
富士吉田ICから富士スカイラインに乗って山梨県側の稜線をうねうねと登っていく。
見上げると……うわ、さっきまで超快晴だったのに山頂に傘雲が。
これだから山の天気は侮(あなど)れない。さっき麓で見た超快晴の富士は束の間のピンポイント風景だったということだろうか。…うーん。
さらに運の悪いことに、5合目を目前にして誘導係にクルマを止められてしまった。 どうやら今日はもう五合目駐車場は満車のようで、ここに駐車して 「あとは歩け」 ということらしい。 距離にして1.5kmほどなので、ここからは徒歩でいくことにした。
しかしよく見ると途中の路上駐車スペースには結構な空きスペースがあり、誘導係は相当にサバを読んでかなり手前で一般車両を切っているように見える。後で聞いた話では観光協会関係者(フリーパスで上まで行ける)が登ってきたときのために一定数のスペースを空けているらしい。 こんなところにも特権階級は存在する訳ね。
さてそのまま歩いていくと、雲がかかってきて周囲の視界は墨色のフォギー空間に呑まれてしまった。とはいえ、こんなことは山ではよくあることなので一喜一憂することなく登って行こう。
■五合目
やがて五合目の駐車場に到着した。 おお……休憩所と呼ぶにはあまりに立派な施設がずらりと並んでいる。
さっきまで圏外だった携帯電話もここではインジケーターがフル点燈だ。クルマで簡単に登って来られる場所だけに、カジュアルハイカーがわんさか詰め掛けてちょっとした繁華街のようになっている。なんだか筆者のイメージする "登山" とはずいぶん違うのだが…まあこれが富士山流ということなのだろう。
赤いポストが目に付いたので良く見ると、なんと郵便局だった。なんとも至れり尽くせりではないか。ちなみに富士山の郵便局は山頂にもあって、もちろんこちらは日本で最も標高の高い郵便局である。記念のスタンプ目当てに登頂する郵便局マニアの方もいるようだ。
登山者むけに金剛杖も売っていた。日の丸に旭日旗か……やはり、日本を象徴する山はこうでなければなるまい。
その一方で 「なんだこりゃ」 と思ったのがこの看板であった。国際交流を進展するのはまあ良いとして、受け入れるならもっと親日国の国民を優遇してあげようよ。
さてそうこうしているうちに、やや視界が回復してきた。駐車場+休憩所越しに本栖湖(左)と精進湖(右)がみえる。なるほど…ここは富士五湖のほぼ全域が見渡せる立地なんだな。
風がつよいので雲はぐんぐん流れていく。ようやく青空がいくぶん覗いたが、それもほんのわずかなこと。それなりに視界は通るのだけれど、基本的に曇り or 五里霧中が交互にやってくる状態だ。さて、どうしたものかな。
<つづく>