2014.06.28 沖縄:久米島でシュノーケリングに挑戦(その5)
■ ゆったりとした時間
ピクニックシュノーケリングツアーから戻った後は、帰還の時刻までフリータイムになる。何をしてもいい訳だが、何もしないという贅沢を選択してもいい。…静かな、ゆったりとした時間帯である。
…といっても、無制限にどこへいっても良いという訳ではなく、目の届く範囲には居るように…との緩い縛りはある。フラフラと遠くに出掛けて行方不明になってしまった場合、船が出てしまうともうここは完全なる無人島だ。次のツアーの船が来るまで本当のサバイバルになってしまうw
それはともかく、同じツアーでやってきた皆様は寸暇を惜しんでアクティビティに邁進しておられるようで、パラソルエリアは無人のまま荷物置き場と化していた。筆者は…そうだな、砂州の周辺を迷子にならない程度に散策してみようか。
…ということで、ゆるゆると歩きだしてみる。青と白でくっきりと二分された世界。素晴らしい♪
こんな素晴らしい景観が、戦後のリゾート開発ブームのなかにあって、ほとんど手つかずのまま保存されたのは奇跡のようなものだろう。日本でよくあるパターンは、浜茶屋がズラーリと並んで 「カキ氷+ラーメン」 とかあまり健康によろしくない組み合わせ(笑)の商売が成立してしまう…というものだが、ここにはそういうものはない。
それが何故なのだろう…と思って調べてみると、背後にいるのはやはり米軍なのであった。
実はここは大戦末期に米軍に接収されたまま、いまだ返還されていない未帰還地なのである。名目は射爆場ということになっていて、実際には爆弾は投下しないけれども、砂州を攻撃目標として計器ベースの照準訓練が行われている(※)。つまり筆者はこの瞬間、「外国の軍事施設への不法侵入者」 というあまりありがたくない身分でこの浜に立っている。
それが許されているのは、米軍側が侵入を黙認しているからに過ぎない。どこかで馬鹿が出現して 「先生、バナナはおやつに入りますか」 的な空気を読まない公開質問を在日米軍にした途端、この微妙で曖昧なバランスの上に成立しているツアー (…というか久米島の観光産業そのもの) は崩壊してしまうかもしれない。そのくらい、基盤は脆いものなのである。
※訓練の日数はシミュレーターが充実した現在ではほとんどゼロに近いそうである。久米島役場と観光協会に聴いてみたところ、射爆場という言葉には抵抗があるようで 「上空が訓練空域になっているということです」 と念を押されてしまった。
浜に掘っ建て小屋未満の休憩所しかない理由も、船をつける桟橋がない理由も、実はそのあたりから来ている。建築許可申請なんて出せる訳がないし、出したところで正式な許可など下りる筈がない。
そういう経緯を知ると、限られた渡船業者だけが限られた人数を浜に渡している現在のツアー形式の出来上がった背景がなんとなくみえてくる。
現在はての浜には、民間地主が1名いる。米軍から地代が支払われているのかは不明だが、沖縄の他の島々における黙認耕作地と一緒で、捕まらない程度に出入りする実績を積み重ねて、最初の足場を築いたのではないだろうか。そして冷戦の進展するなか、米軍も敢えてそれを取り締まらない配慮をみせた。
そこに乗ったのが、はての浜を "スカイホリデーリーフ" と銘打って大々的にTV-CMを打ったANAで、これだけ派手にやってお咎めなしなら…と、フォロワー的渡船業者が増えたのが現在のはての浜観光の姿ではないか…と、筆者は推測するに至った。業者によって渡る浜が異なっているのも、そのへんがごにょごにょなのだろう。
「至った」 とか 「ごにょごにょ」 とは何だよとツッコミがありそうだけれども、役場も観光協会も肝心のところは明言を避けて "空気を読めよ" とのオーラを発するばかりなので(笑)、筆者は思想の自由を行使して推測の屋上屋を重ねるしかなかった。筆者的には既に自前の結論に至っているのだが、デリケートな話であり、どこかで変な引用をされても困るので曖昧に書いている。
…と、ふいに日が陰った。どうやら昼も近くなって雲が出始めたらしい。
雲はゆっくりと流れて、日差しと影が交互にやってくる。風や雲には、人間の決めた境界なんて関係ない。ただひらすらに、ゆっくりと流れるばかりだ。
気が付くと足元に、珊瑚のかけらを集めた跡があった。砂州を綺麗に見せるための清掃の一環なのか、単に観光客の戯れなのかはわからない。
そのひとつをつまんでみた。ミもフタもない言い方をすれば珊瑚虫の体内で固定化された炭酸カルシウムの塊ということになるけれども、これが何年もかけて砕けていって、この砂州を構成する砂となっていく。…こいつも、何十年か、何百年か後には、砂粒にまで砕けていくのだろう。
…その頃までにこの浜が日本の領土として帰ってくる可能性があるのか、筆者にはよくわからない。いまのところ確かなのは、返還の予定はないというただ一点のみである。
■ 最後にいまいちど、浅瀬を探訪
さてそろそろ撤収時間も近づいてきたのだが、まだ20分くらいは余裕がありそうだ。シュノーケル組はずーーっと海に入りっぱなしのようだし、筆者も最後にもう少々、水中での撮影で遊んでみよう。
まずはごく浅い波打ち際からエントリー。水深は20cmもないようなところだ。
さすがにこのくらいの浅瀬だと、陽光も十分に届いて実に明るい。
少しずつ、水深のあるところに進んでいく。…といっても腰まで行かないくらいの深さで、このくらいの浅瀬で海底の珊瑚などを撮ろうと動きを止めてじっとしていると…なんと、魚が寄ってきた。
水深が浅いので光は充分、距離が近いので色かぶりもなし。…こりゃ凄いや。
正確には、魚が "寄ってくる" というよりも、人が近くでバシャバシャと動いていないので "気にしないで泳いでいる" といった感じだろうか。こちらから脅かすような真似をしなければ、あまり警戒感をもたずにスイスイと目前を通り過ぎていく。
なんのことはない、最初からこういう撮り方をすれば良かったのだ。これで麩とかパンくずでも持ってきて撒餌にすれば、撮影し放題じゃないだろうか(^^;)
干潮になってきたので、水深の浅くなった藻場にも行ってみた。水深は50~60cmくらいしかなく、ちょうどカラフルなハギの仲間みたいなやつがいたので撮ってみた。カメラからの距離は30cmくらいだろうか。もちろん、この距離では色かぶりはほとんどない。
実物は、こんなに小さいヤツだったりするのだが(笑)、水中撮影のコツを確証させてくれたという点でこいつには密かな感謝の念を捧げたくなった。安価なコンデジで撮影する場合、陽光を最大限に生かせる浅瀬で、できるかぎり被写体に寄る。…単純だが、これが一番なのだろう。
■ 撤収
さてここで、タイムアップとなった。「そろそろ引き上げますよ~」 との声がかかり、荷物をまとめる。
大潮でなければこの浜で昼食タイムがあり、もうあと2時間くらいは滞在できた筈なのだが、まあ仕方がない。船が走れなくなる前にここを脱出しないと本当に帰れなくなってしまうのだ。
行方不明者がいないことを確認したら、全員ボートに撤収。チェアやパラソル約30基も撤収で、ツアースタッフの肉体労働負荷は高そうだった。どんな業種でもそうだけれど、中の人というのは大変なのだなぁ…
ツアーの面々はそれぞれ大満足だったようで、口々に 「…これは、帰りたくないねぇ」 などと言っていた。筆者的にも初めて尽くしの体験で、収穫は大であった。…さらば、はての浜~♪
■ エピローグ:カレーの思い出
さてそんな訳で、この5ページも使って長々と書いてきたレポートもここで終了である。最後は、本来は砂州の上で頂く予定だった昼食タイム。イーフビーチホテルのレストランで頂いたのだが…
幾許かの追加料金を払ってもいいから、レトルトのカレーというのはもうちょっと考えて欲しかった(笑) 確かに浜で食べる予定だったメニューではあるけれど、島一番のリゾートホテルのレストランでこれは無いだろ的なw
…いやまあ、いいんだけどね(^^;)
<おしまい>
■ あとがき
いやー今回も、ダラダラと長く書いてしまいました。当初は久米島周遊ぶんも含めて記事にしようかと思ったのですが、旅の焦点がピンぼけに「ならないようにと思い直し、今回はシュノーケルツアーの部分をメインにネタを圧縮。…それでもコンパクトにまとまらなかったのは、まあ筆者の力量の不足によるものでしょう(汗)
さて筆者はこれまでも沖縄は9回ほど(今回で10回目)訪れているのですが、デジ一眼などを持っていると海に機材を入れるわけにもいかず、なかなかシュノーケルに挑戦してみようという気分にはなりませんでした。それが今回は荷物番の労力を考えなくてよい環境があったので、ようやくトライしてみた次第です。なかなかに楽しいひと時で、これならもっと早くに手を付けておくべきだった…と今更ながらに反省しています。
機材はもう、今回はツアー業者さんにお任せで PENTAX(リコー)の水中コンデジ Optio WG-Ⅱ を使ってみたのですが、思ったより使い物になって 「これなら旅行先で遊ぶのに必要十分じゃないの」 的な感触です。実のところ水中撮影というのはもっと凄い機材が必要なのだろうと思い込んでいたのですが、結論からいえば嬉しい誤算でした。
カメラの取り回しとか撮影の要領的な部分は既に本編に書いた通りですが、面白かったのがバッテリーの 「持ち」 についてで、カタログスペックだとこのカメラの撮影枚数は260枚くらいなのですが、実際には420枚撮ってバッテリーはまだいくらか余裕が残っていました。これはズームモーターをほとんど駆動させずにワイド端で撮っていた(※青被りが入るので遠景をズームしてもあまり意味がない)というのもありますが、ツアー業者さんがカメラの設定を最大解像度(16M pixel)ではなく1段階落とした12M pixel にしていた恩恵も大きかったようです。さすがは現場の知恵と言いますか、筆者は 「こんなバッテリーのスタミナ対策があったのか…!」 とちょっと感心してしまいました。これでちょっとリコーになりました…なんて書くと下手な落語みたいですけど(笑)
ところでツアーから戻ってくると、ダイビングに行ったグループの使ったらしい(ちょっとお高そうな?)デジカメが水に浸けられていました。これはいわゆる "塩抜き" で、海水に浸けた機材は放っておくとあとで塩の結晶がケースの蓋やスイッチ類の可動部などに固着してトラブルの原因になるので、こうして真水に浸けて塩分を抜くのです。筆者の借りたコンデジも、おそらく後でこの中に放り込まれたことでしょう。自前で防水デジカメを購入して海に入る場合、こういうメンテナンスが必要なことは知っておきたいところですね。
さて筆者はこのあとさらに2日間島にとどまって暇人探訪をしたのですが、長くなるのそちらは割愛することにします。近代化されすぎた沖縄本島と違って、離島には手垢のついていない見どころがたくさんあって素晴らしいのですが、記事を書く手が追い付きませんので…
こんなふうに埋もれていく旅の記憶(というか写真)は多く、そのうち、そのうち…と思いながらもHDDの肥やしとなっていく現状は勿体ない限りです。もっと文才というか、筆速度が欲しい。…しかしまあ、こればかりは仕方のないところですかね(笑)
<完>