2015.10.04 那須:姥ヶ平の紅葉(その2)
■ 巻き道を行く
さて山頂は雲の中なので、上は目指さずにいつもの如く牛ヶ首方面に巻いていく。ナニゲに筆者はこの方面の一見するとカルスト台地っぽくみえる景観がお気に入りである(^^;)
活火山である茶臼岳は定期的に火砕流で周辺の植生がリセットされていて、ほんの数kmの距離感のなかで多様な景観を目にすることが出来る。ここはかつての噴火で飛び散った火山弾や溶岩片がごろごろしている。そこをガンコウラン(高山植物)の緑の絨毯がゆっくり、ゆっくりと覆っていく。こういう景観は他の地域なら標高2500mくらいに展開しているのだが、ここでは火山リセットの効果で1600mそこそこで見ることが出来る。
その絨毯部分のアップはこんな感じである。最近は踏んだり乗ったりすると自然保護団体に文句を言われることが多くなったけれども(^^;)、筆者が子供の頃はこの上にビニールシートを敷いて弁当を食ったり、寝転んで空を見上げたりするのはごく自然なことだった。フカフカのクッションみたいな蝕感で、この上なら転んでも怪我をすることはなかったからだ。
※もちろん今では自然保護が叫ばれているので踏まないに越したことはない(…と、いちいち注釈をつけなければならないところが窮屈な気もするけれども、まあ時代の流れなので ^^;)
そんな絨毯の上に、ぽつり、ぽつりと色づいたドウダンの小木が点在する。
アップにするとこんな感じである。こんな膝下くらいの小木でも樹齢は数十年ほどもある。栄養分が少ないのと風が強烈なので大きく成長することが出来ないのである。
そこに一年草であるススキの仲間が点在してなんとも趣のあるグラデーションを形成している。一年草は高山では貴重な "土の材料" だ。その大部分は微生物による分解の過程で風雨で流されてしまうのだが一部が高山植物の根や岩の隙間に引っかかって、やがて薄い土壌を形成していく。
特に緑の絨毯であるガンコウランは網の目のような根と枝葉で土や砂を保持し、土壌の定着に一役買っている。これが薄く広がった上に、そこに乗る形でようやくススキや小木が定着し根を張ることができるわけだ。
ちなみに遥か向こう側の山の斜面(直線距離で1.5km)は噴火による被害を受けておらず潤沢に木々が生い茂っている。こちら側の斜面があの状態になるまでに、あと何百年ほどかかるのだろう…(^^;)
■ 行人道方面の景観
やがて南月山につづく日の出平の稜線が見え始める。
このあたりから見下ろす谷間の向こう側には殺生石方面から登ってくる行人道が通っており、向こう側から見ると茶臼岳の裾野に極彩色の木々が居並ぶ様子が見える筈である。殺生石から牛ヶ首までは6km(標高差950m)ほどあってちょっと歩くには大変なのだが、そのうち機会があったら試してみたい気がする。
残念ながら上空は雲が停滞しているので日差しはたまにしか射さないのだが、日の当たったところはやはり鮮やかにみえる。周辺を歩いているカメラマン氏も日差し待ちでやや長めの休憩を繰り返しながらゆっくりと歩いている。…まあ、考えることは皆一緒ということかな。
この谷間の紅葉は、はるか向こうに見える牛ヶ首の峠にむかって徐々に高度を上げながら続いていく。
標高が高くなるにつれて環境が厳しくなるので樹高はどんどん低くなる。視界を遮るような高さではないので見晴らしはよい。
それにしても、いつものことながらこのあたりの真っ赤な色彩は美しい。
栃木県の山岳観光地と言えばメジャーなところは日光と那須ということになるのだろうけれど、紅葉の地色は明確に異なっている。日光は実は黄色く色づく木々が多く、赤色は竜頭の滝の周辺と中禅寺湖の周囲に帯状に見られる程度である。
一方で那須は御覧の通りもう一面の赤色で埋め尽くされる。姥ヶ平の紅葉する十月初旬は、ズバリこの赤色を求めて那須を訪れる人が多い。赤い紅葉を楽しみたければ、まずは那須に来ることをお勧めしたい。
■ 牛ヶ首
とかなんとか言っている間に牛ヶ首に到着。峰の茶屋ルートの人もロープウェイ経由の人も、いったんここで休憩して姥ヶ平を見下ろすスポットだ。さて、肝心の姥ヶ平は…
ぬおおおおっ!
…五里霧中ではないか!( ̄▽ ̄;)
<つづく>