2016.02.15 常陸~房総周遊記:九十九里浜~鴨川編(その2)
■ 九十九里ビーチライン
さて飯岡からは r30 通称九十九里ビーチラインを南下していく。名前からして、もう山国の人間には憧れの海浜ドライブコースである。
…が、走ってみると実は海は見えない(笑)
ひたすら続く砂丘には防風林がびっしりと植えられていて、視界を遮ってしまうからだ。海が見たいのであれば道を折れて海岸に出るしかないのだが、その海岸は護岸工事の真っ最中で一般車両はシャットアウトされてしまう。…世の中、なかなかにキビシイなぁ( ̄▽ ̄;)
それはともかく、防風林の高さを除けば九十九里浜の地形はすこぶる平坦である。これ(↑)はさきほどの飯岡漁港から望遠で撮った九十九里浜になるが、起伏がほとんど無いのでたまに大きな建物があったりするとまるで直接海の中から生えているような錯覚を覚える。これはこれで面白い風景ではある。
■ 木戸浜で、砂浜アタック!
飯岡を出て20kmほど南下し、やがて木戸浜に到着した。今回筆者は特にここを狙ってきた訳ではないのだが、海水浴場の看板が出ていたので海が見られるかな…と思い、ふらりと折れてみたのである。
ここも奥の方で護岸工事を行っていた。…が、出てきたクルマは一般の乗用車で、乗っていたのはこれまた作業員とは思えない若いカップルだった。…なんだこりゃ(´・ω・`)
警備員氏に 「入れるんですか?」 と聞いてみたところ 「どーぞ、どーぞ」 というので工事車両のいない方向に侵入してみた。どうやら工事はすぐ南隣にある木戸川の河口のほうで行われていて、海水浴場方面は工事区間にはなっていないらしい。
見れば道路が砂浜に直結している。道路の高さ=浜の高さというのは凄いな。津波が来たら助かる予感がしない(^^;) …これでは護岸工事もしたくなるだろう。
後で調べてみたところ、この海水浴場は津波で浜の地形が変わってしまったようで、震災以降ずっと閉鎖されたままになっていた。木戸浜以外にも九十九里浜全体で計14か所が閉鎖されており、昨年営業した海水浴場は20か所ほどだったらしい。
このあたりの砂浜は幅が300mあまりもあってべらぼうに広い。戦前はもっと広かったという。
実は九十九里浜の北端(屏風ヶ浦)と南端(太東岬)付近で海食防止の護岸工事が進んだために、砂の供給が減ってしまい、浜は年々浸食が進んでいた。そこに2011年の東日本大震災の津波が押し寄せ、浜の砂をごっそりと抉(えぐ)り取ってしまった。遠浅の砂地が特徴的だった九十九里浜は、今では波打ち際の直下で急に深くなっていて、海水浴場を開くには不適切と判断されているところが多い。いま筆者のいる木戸浜も、そんなひとつなのである。
ちなみにこの付近はウミガメの産卵地として有名だそうで、車の乗り入れは原則禁止となっている(取材時には知らずに入ってしまっているのだが ^^;)。ではどうして筆者が入れたのかというと、これは推測するしかないのだが、人が来なくなってしまったので地元自治体があまり高飛車な態度でいられなくなったのと、ウミガメが来るのは夏なのでオフシーズンには縛りがないのかもしれない。
砂浜には杭が打ってあって、車で走り回れるのはざっと150~200mくらい。これをみると長い砂浜のうち一部分だけを限定で解放…といったところか。
浜には無数の轍(わだち)が残っていた。いったいどれだけのクルマが走り回っているのやら。
さてそれでは新しき戦友(とも)の砂上性能を見てみよう。四駆モードは直結にしてそろりそろりと踏み込んでみる。砂浜は水を含んで固くなった砂層と、風で飛んできて積もったサラサラの砂層でできていて、サラサラ砂の上ではタイヤは結構沈む。いくらか走り回って様子を見てみたのだが、だいたい平均で10cmくらいは沈み込むようだ。
タイヤのグリップ力は、スタッドレスのブリザックではノーマルタイヤよりはマシなのだろうけれど、やわらかい砂の上ではあまり芳しくはない。四輪ともいくらか空転しながら、泳ぐようにモリモリと進んでいく感じだ。ビーチバギーでぎゅわーんとカッ飛ばすような爽快感を期待するのは間違いで、あくまでも 「スタックしない程度には前進できますよ」 というものと思った方がいい。
※砂への潜り込み方は車重とタイヤ幅(というか接地面積)で変わってくる。スポーツ向けのビーチバギーはほとんどフレームだけの軽い車体に太いタイヤを履いて沈まないようになっている。
筆者はとりあえず海とクルマの写真が取れればよいので、あまり過激なハンドリングは控えてゆるゆると走ってみた。ただしまだ新車なので、海水に浸かるような波打ち際までは寄らない(^^;)
砂浜は波打ち際に近づくと締まって固くなる傾向がある。おそらくは水分を吸っているためなのだろう。スタックしやすいのは浜の乗り入れ口の付近で、いったんそこを乗り越えてしまうと走りやすくなる。こういう感覚的なところは、実際に踏み込んでみないとなかなかわからない。
写真を撮りながらゆったりとしていると、突然 「助けてアルよー」 と中国人観光客がやってきた。どうやら筆者の真似をして砂浜に踏み込んでスタックしてしまったらしい。JAFカードは持っている、日本語で状況を説明して救助を呼んでほしい…という趣旨のことを言っているようだ。
見れば重そうなハイエースがずっぽりと砂にスタックしていた(^^;) 「わ」 ナンバーであるところをみるとレンタカーである。ハイエースには四駆仕様もあるがこの車はFR(後輪二駆)で、やはり砂浜に2WD車で乗り入れるのは無茶だったようだ。
幸い、スタックの程度は軽いので、筆者の積んでいた雪用スコップで穴掘り脱出を提案、交代で砂を掘って7人掛かりで 「アイヤー!」 と押し、10分ほどで無事に脱出できた。「砂浜に入るには四駆でないと駄目アルよ」 という趣旨のことを言ってみたが、果たして通じたかどうか(笑)
…ただ、「謝謝」 という言葉は聞き取ることができた。最近あまり世間で評判のよくない中国人だが、今日会った彼らは礼節を知る人たちのようであった。…できれば常識も知ってほしいのだがw
※ハイエースはエクストレイルで牽引するにはちと重いので牽引はしなかった。軽自動車だったら牽引フックの性能を試してもよかったかも…(^^;)
■ 白里海岸
木戸浜を出てから6kmほど南下すると、片貝漁港という砂浜に開けた河口港(ちょっと珍しい)があり、そこから九十九里有料道路が始まる。r30(九十九里ビーチライン)よりも波打ち際を走る道で、景観が素晴らしいと言われているので乗ってみようかと思ったのだが…なんとここも津波対策工事で絶賛通行止め中である。…うーむ(´・ω・`)
ちなみに写真奥(↑)に堤防のようなものが映っているのが九十九里有料道路で、高さ5mほどの盛土をして高架式の道路を通している。津波対策工事とは、これを即席の堤防として活用しようとしているものらしい。
さきほどの木戸浜のように海に出られる場所はないものか…と探していると、白里海岸ICの部分が解放区になっていた。有料道路は通行止めだが海岸に出ることはでき、ICに隣接して広大な駐車場がある。その先はすぐ砂浜に直結している。
駐車場はガラガラであった。風がつよく、浜から地吹雪のように砂が飛んでくる。
ちょっと奥まで進んでみた。ゆったり浜の写真でも…と思いきや、雨がポツポツと降ってきて、それが砂と一緒に吹き付けてくるので顔が痛いw …というか、これはクルマの塗装には良くなさそうだ( ̄▽ ̄;)
観光情報ではここに幅500mの広大な砂浜がある…と書いてあったのだが、実際の波打ち際は駐車場のほとんど目前にある。「100m沖まで行っても足が届くくらいの遠浅の浜」 というのは昔の話で、ここも震災でごっそり砂が持って行かれたクチなのかもしれない。
駐車場からちょっと外れるとこんな感じで、なにやらいろいろと埋もれていた。浜が狭くなっても飛び砂が減る訳ではなさそうで、なにやら世紀末映画のロケ地にちょうどよさそうな風景になっている。
…などと言っているうちに、浜風で愛車の周りに風紋が出来はじめた。ほんの5分程度でこんな状態になってしまうのか。これはあまり長居しないほうがよさそうかもしれないな。
ということで、ここは早々に撤退。うひょー。
■ 白子から九十九里有料道路に乗ってみる
さて白里からさらに5kmほど南下して、白子ICにやってきた。ここから南側は工事区間から外れるので九十九里有料道路に乗ることができる。…といっても、終点の一宮までわずか6kmしかないので、時間短縮が目的なのであればわざわざ走るメリットはない。
しかしせっかく来たのであるから、それでも乗ってみるのが漢というものであろう。…ではいざ、海浜道路へ!
…あれ、やっぱり海は見えない( ̄▽ ̄;)
有料道路から海岸線まではおよそ200m、堤防を兼ねた盛り土の上を走っているので視界は開けそうに思うのだが現実はさにあらず。
防風林(松と笹竹?)が結構びっしりと植えられていて海岸は見えないのである。
ドライブサイトなどをみると 「海が見えて爽快」 なんてことが書いてあるで、そのような区間もあるのだろう。しかしどうやら爽快な区間は護岸工事の真っ最中(海が近いから?)のようだ。この工事が一段落するまでは、九十九里浜を見たいなら r30(海の見えないビーチライン)からちょこちょことショートアタックをかけて浜に抜けられる小道を探すしかない。少なくともあと数年は、こんな状況が続きそうな気がする。
こうしてみると、震災はいろいろと面倒な置き土産を残して行ったようだな…(´・ω・`) 5年たってこの状況ということは、爽快な海浜ドライブを楽しめるようになるのはまだまだ先のことなのかもしれない。
そしてあっという間に一宮。終点ICの手前800m(なんでこんなところに作った?^^;)にパーキングエリアがあったので小休止。ここは海が見えるので九十九里最後のチェックポイントとして寄ってみた。いやまあ、意地でも見てやるぞこん畜生Fuck!…なんて微塵も思ってはいなのだが(笑)
ICは一宮川の河口にあり、河口を通して太平洋を望むことができる。といっても穏やかな白砂の浜がある訳ではなく、どどーんと打ち寄せる灰色の波の列があるばかり…(笑)
うーん、九十九里浜はこの付近で終わってしまうのだけれど、どうも遠浅で穏やかな白砂の海岸…というイメージが覆ってしまった気がする。穏やかな晴天の日に来ればまた違った印象を持つのかもしれけれども、しかしこれが紛れもなく本日の九十九里浜の風景であり、あるがままに受け止めることとしたい。なにぶんにも "百聞は一見に如かす" である。
さてせっかくなので、ここでご当地限定のサザエのつぼ焼きポテチをつまんでエナジーチャージ。
この先は、浜ではなく山と磯の世界だ。高さにしてせいぜい100~200mくらいの起伏の連続体=房総丘陵が70kmほどにわたって続いている。
この起伏は国土地理院からは山と認められず "丘" という扱いになっている。しかしこれが関東平野を吹き降ろしてくる季節風を受け止めて散らしてくれるお蔭で、房総半島の南側は冬でも特異的な暖かさを教授しているのである。
ここからは、そんな土地に踏み込んでいく。…まだまだ、道は続く。
<つづく>