2016.02.15 常陸~房総周遊記:九十九里浜~鴨川編(その3)
■ 勝浦
さて一宮を過ぎてからはR128に沿ってさらに海沿いを南下していく。R128は別名を外房黒潮ラインという。九十九里ビーチラインがビーチの見えないステルスロード(笑)だったのに対し、こちらはちゃんと海が見えるコースだ。
空模様は雨になってしまったが、寒くはない。むしろ九十九里で砂だらけになってしまった車体が雨で洗い流されるので、しばらくはシャワー状態のほうが好ましいくらいだ。
一宮からは少し内陸部を走る。山がちのいすみ市を抜けて二連荘のトンネルを抜けると、勝浦に出る。本格的な海浜ロードはこのあたりからだ。
おお勝浦は、ナニゲに南国ムードが漂っているな(^^;)
筆者は目下のところ鴨川を目指して南進中で、勝浦は基本的にスルーするつもりでいる。それなのにわざわざ触れるのは、とある光景を見たからであった。場所は勝浦市の東端にちかい部原という集落の付近だ。基本的に磯が続く勝浦市にあって、ここは小さな浜がある。
そこで何を見たかというと、海に漂う物体の群れであった。海鳥にしては大きいな…と思って望遠レンズでのぞいてみると…
なんと、サーファーなのである。真冬の海でサーフィンですかいっ( ̄▽ ̄;)
しかし調べてみると真冬のサーフィンというのは実はそれほど珍しいものではないらしい。いまどきのウェットスーツの保温力というのはナカナカ侮れないものがあって、水温が15℃以上あれば割と快適に動けるという。
勝浦は黒潮効果で真冬でも海水温は20℃くらいある。そして冬であれば海水浴客もおらず、のびのびと海を独占できる。そんな訳で、実はサーファーにとってはスーツさえちゃんと装着していれば冬季はオンシーズンなのである。
余談ながら安価なスーツは1万円未満で結構なバリエーションがある。サーフボードの価格帯は安いものは2万円くらいからである。もう少し初期投資が必要なのかと思いきや、サーフィンというのは案外リーズナブルに始められる趣味なんだな。
…ということで、そんな雑学を知ったところで何になるんだよ、との突っ込みがあることは承知しながら書いてみた(笑) 筆者的には雑学だからといってバカにはできないと思っている。なにしろこれを知っているだけで、冬の海に入っている人の見え方が 「奇人変人の寒稽古」 から 「レジャーを楽しむスポーツマン」 に昇格するのだから、その差は結構大きいのだ(^^;)
■ 鴨川で菜の花を見る
さて勝浦を過ぎて、次はいよいよ本日最大の目的地、鴨川に向かう。
勝浦の中心市街地からはおよそ20km、かつて房総半島の南端を占めた安房国の領域である。安房国といってピンとこない人でも里見八犬伝の舞台といえば 「ああアレね」 と思うのではないだろうか。ただし八犬伝は主に館山方面の話なので、残念ながら鴨川はほとんど登場しない。そんな訳で、筆者もここで八犬伝の話を書くのは控えておく。
今回筆者がここを訪れた目的はズバリ、菜の花だ。普通、鴨川といえば鴨川シーワールドに行くのが定番の観光コースであるらしいけれど、今回はばっさりとカットしている。この時期の南房総の魅力と言えば、筆者的には真冬に見る花畑なのである。それが花卉栽培で有名な南房総市や館山ではなく、鴨川で見られるのだ。
…で、向かったのは鴨川市役所であった。なんで市役所?と思われるかもしれないが、筆者はもともと雪祭りに行く予定で休暇を取得して直前に行先を変更したので、実はこちら方面の事前調査をあまりちゃんとしていないのである(笑)。そこで手っ取り早く観光情報をGETしに来たわけだ。
これが菜の花畑の観光案内である。オンシーズンなので一番目立つところに置いてあった。 菜の花畑は、ここでは 菜な畑 と表現されている。方言なのか造語なのかはよくわからない。菜の花は正月明け早々から見ごろを迎えるそうで、パンフレットでは花摘みイベント期間を1/9~3/13で設定している。
ちなみに鴨川付近では紅葉の見頃は12月中旬頃になる。紅葉が終わるともう正月で、鏡開きより先に菜の花が咲いていることになる。季節の巡り方が超スピードというか、もうほとんど冬は無いようなものだろう。
「どのあたりで咲いていますかね?」
…と案内係らしいクールビューティ嬢(以下CB)に尋ねたところ、「こちらから見えます」 と正面玄関の延長線上にある階段に案内された。この淀みのない手際の良さから類推すると、どうやら筆者の同類は多いらしい。
筆者 「ここから見えるという訳ですね」
CB 「はい」
筆者 「ではさっそく」
CB 「お待ちください」
筆者 「は」
CB 「上がりすぎです。もう少し下がっていただくのがよろしいかと」
筆者 「…微妙なんですね」
CB 「もうあと1段」
筆者 「うぬぬ」
CB 「そこで凝固して正面をご覧ください」
筆者 「おお!」
なんともタイトな条件ながら(笑)、階段の窓越しに菜の花の黄色い絨毯が見えた。…それにしても何というマニアックなチラ見せ具合…w 狙ってやっている訳ではないのだろうけれど、これはこれで話芸として極めれば鴨川の新しい重要無形文化財か何かに…いやそれは無理か(^^;)
それはともかく、市役所から見えた菜の花畑はこんな(↑)場所であった。もともと休耕田を利用してアブラナを栽培していたもので、震災後に町興し企画として昇格した。初回が2012年というから今年で5回目、まあ歴史は浅いけれども菜の花一本に企画を絞ったは正解のように思う。
筆者は2月の菜の花といえば南房総フラワーラインという意識があって2011年に内房側から野島崎にアプローチしたことがあったのだが、そのときは鴨川までは来なかった。フラワーライン周辺と鴨川では何が違うかというと、フラワーライン周辺は商品作物として花卉栽培を行っており多品種を栽培するので非常にカラフルなのだが、鴨川は菜の花一本勝負なので見渡す限りの黄色の絨毯になるのである。
市役所から北上する道は、両脇に菜の花がズラーリと並んでいた。一時期強かった雨足は小降りになってきた。水を含んで重くなった菜の花は頭を垂れ気味でちょっとシャッキリ感がいまひとつだが、まあとりあえず咲いてはいる。
土手の一角に即席の詰所のようなものがあったので寄ってみたところ、花摘みの会場がここであった。ただし時刻はちょうど営業終了=午後3時で、本日の受付は終了である。撤収準備をしていた職員氏に聞いたところ、撮影するのはご自由にどうぞ、とのことなのでいくらか踏み込んでみた。
花は少々伸び気味で、菜種になるサヤの列が大量についていた。この分だと、咲き始めのピンピンに張りのある姿は2週間前くらいだろうか。花摘みイベントはあと一か月続くことになっているけれども、これだとシーズンは随分早めに終わってしまいそうだ。
「ちょっと、くたびれ気味ですかね…」 と言う筆者に、職員氏は 「こちらはもうピークを過ぎていますが、通りひとつ向こう側に活(い)きのいい場所がありますよ」 と教えてくれた。
そんな訳で通り一本ぶんを移動。…おお、たしかにそれなりに花の勢いがあるな。手前の株は少々倒れ気味だが、全体としてはいい感じで満開になっている。
出来ることなら青空のもとで見たかった風景だけれども、まあ "菜の花を見る" という目的は一応達成できたので良し ヽ(´ー`)ノ
…で、あまりイケてる構図ではないけれど愛車と菜の花のツーショットも撮ってみた。とても先週雪の中を走っていたとは思えない季節感覚にちょっと違和感もあるのだが(笑)、それだけ日本の気候がバラエティに富んでいるということだと思いたい。
砂浜で思いっきりジャリジャリになってしまったボンネットも、どうやら雨に洗われてきれいになってくれたらしい。今回のコースではゆっくり洗車のできる場所はないので、戻ったらちゃんと砂落としはするとして、このタイミングで雨に遭ったのはまあ悪くなかったな。
その雨に洗われたボディに、菜の花畑が映り込んでいた。悪くない風景である。新しい戦友(とも)と出かけた初めての遠出の記念に、これを記憶しておこう。
■ 野島崎へ
さて時刻は午後4時。鴨川を出た頃から空模様が回復し始めた。菜の花の景色を思うと、もうあと二時間ばかり早く青空が覗いてくれたら…と思わないでもないが、こればかりはまさに天の采配であるから悩んでも仕方がない。
とりあえず今日の主要なチェックポイントは一通りクリアした訳だし、概ね満足すべきだろう。そんな訳で、日が傾いていくなか宿をとった野島崎へとゆるゆるとさらなる南下をしていく。
途中、鴨川オーシャンパーク物産館なる施設に立ち寄ってみた。地元の農産物/海産物などを販売しているところで、農産物としては枇杷(びわ)、落花生、蜜柑、海産物としては鹿尾菜(ひじき)、海苔、近海魚の干物等を販売していた。まだ旅程の途中なので、生ものは控えて、伊勢海老茶漬けとか枇杷サブレなどリーズナブルな価格のものを物色。
企画もののお土産は、デザインセンス的に少々前衛的すぎてコメントは省略…
それにしても千葉県のお土産って、何かこう…微妙なものが、多い…よねぇ(^^;)
■ 2日目の終わり
そんなこんなで、野島崎の民宿に到着した頃にはとっぷりと日が暮れていた。海浜ドライブ160kmのコースってどんな感じになるだろう…と思っていたけれど、そこそこ物見遊山しながら走りきることができた気がする。あまり個々のスポットを深堀りしないで景観優先で見て回るなら、このくらいの移動レートでもイケるということだな。
さて明日は天候が回復するらしい。目的地には既に到着しているので、明日はこの野島崎の周辺をゆるゆると巡ってみよう。
<後篇につづく>