2021.10.30 日塩もみじライン(その3)




■ 白滝




さて本日のおそらく最後のチェックポイントとなるであろう白滝を目指して筆者はゆるゆると進んでいる。標高は1170m、もみじラインの最高地点がおおよそ1250mくらいだから、まあほぼほぼ頂上ちかい谷筋といえるところだ。




なぜ最後なのかといえば御覧の通り、まもなく日没になろうとしているからだ。五十里湖まで抜けられれば貫通フラグが立つのだけれど、出発が遅かったのでまあこれは致し方なし。




白滝は日光市側にあるので市境をちょこっとだけ越える。




ハンターマウンテンスキー場のある明神岳の隣、鶏頂山の中腹にある深く切れ込んだ谷筋を、木下沢という沢が流れ下っている。ここに白滝、赤滝という2つの滝があり、上流側の白滝の脇をもみじラインが抜けている。楓が繁茂しているのはこの谷筋の急斜面だ。




到着したのは16:40、ちょうど山の端に太陽が沈むところだった。




その最後の一射しに照らされる山肌。……とはいえ、撮影条件的にはこれで終わりではない。日没後30分くらいはトワイライトの時間帯が続くので、 愛機 Nikon D750 の感度に任せてスローシャッター気味に撮ればまだ間に合う。

そんな訳で、しばし落日の散策と洒落込もう。




さて毎度毎度筆者がここに来るときは紅葉のピークを過ぎた頃で、ほとんど枯れ木みたいな景色をみることになっていた。もみじラインの中腹くらいがちょうど見頃になる時期を狙ってくると、日光市側が幾分寒いためどうしてもピークアウト気味になってしまうからだ。

しかし今年は1600mジャンプ相当の急激な冷え込みのおかげで、標高差をあまり気にしなくてもよい位に紅葉が同時進行している。




おお、いつもの超絶的赤色の楓は今年もいい感じで染まっているな。



これだけ綺麗に染まっているのに観光客はほとんどいない。筆者が訪れたときには一般車が2台だけ。まあこの時間帯まで粘っている人が少ないだけ…という指摘もあるかもしれないが、コロナの影響でスキー場もドライブインも営業していないので、純粋に紅葉を見たい人以外は登ってこないという側面も大きいように思える。



 

■ 廃業のドライブイン、そして滝のある風景




さてそのドライブインは、単なる一時休業ではなく廃業してしまっていた。今や諸行無常の沙羅双樹。




冬眠で凌いだスキー場と違って、ここは経営体力が持たなかったのだろう。まさに不可抗力。……ともかく、お疲れ様と言っておきたい。




そんな "滅びの風景" の中で、紅葉の鮮やかさばかりが際立っているのがなんとも不思議な感じがした。まさに国破れて山河あり。観光施設が営業していなくても木々は勝手に生活史を営んでいる。




これと似たような風景は、かつて震災後の被災地で見たような気がする。
人の気配が消え去った家々と、静かなる草木の繁茂の対比。いずれも居なくなるのは人間のほうで、草木の側はいつも泰然と在る。




これを表現するのに適当な言葉を、どうも筆者は思いつかない。

強いて言うなら、俳諧でいうところの "侘び" とか "寂び" になるのだろうか。状況としては決して喜ばしくはないのだけれど、かつての人の営みが消えて朽ちていく中に、何かしらの美がある。




思うに、日本的な紅葉狩りというのは、これで良いのではないか。




あたりが薄明から夕闇に変わりつつある中、最後に滝を見上げてみた。ちらほらと舞い散る落葉が、水の流れに乗って落ちてくる。




滝壺にはそれが静かに浮いていた。こういう紅葉もまた趣があるな。

俳人であれば何か一句ひねりたくなるかもしれない。筆者にはそちらの才能はないので(笑)写真として残してみた。




17:00を過ぎるとトワイライトの時間帯もそろそろ終わり、スローシャッターも厳しくなってきた。 そろそろ撤退の頃合いだろう。

そんなわけで本日のレポートはここまでとしたい。

<完>





■ あとがき


前回のレポートが色づき具合としては微妙な感じだったので、熟成の進んだ状態も書いておかねば……という動機で出かけた半日レポートでしたが、如何でしたでしょう。

それにしても午後2時(ぉぃ)に出発して午後5時の日没までの3時間分で、結構な距離を走って紅葉の風景を見られるものです。まあ短ければ良いというものでも無いでしょうけど、時間がないなりに花鳥風月を愉しむことは出来るのだな…ということで、筆者はいくらか認識を新たにしてみました。




ところで今年の紅葉は少々特殊です。例として姥ヶ平(↑)の最低気温推移を示してみますが、なかなか赤色の立ち上がるトリガー=5℃未満にならずに高止まりを続けた後、10/17を境にいきなり10℃ほどもガクンと下がって氷点下に突入するというスゴイ展開になっています。

これだと姥ヶ平の現地状況は、残暑の余韻を引きずって綺麗な赤色が出ないまま渋いオレンジ色の紅葉がじわーっと進行したのちに、いきなり凍結、退色……という推移だったと思われます。紅葉チェッカーを立ち上げて以来、こんな雑(!!)な季節変動は初めてです。




一方、標高の低めのもみじラインは、やはりデジタルにガクンと気温が下がってはいますが、ちょうど紅葉の進行する5℃未満、かつ凍結しない程度のレベルに居続けたので色づきが良かったようです。

総合すると今年の紅葉は場所によって当たり外れが極端で、行先とそのタイミングで大きく評価が分かれたのではないでしょうか。




■ コロナ明けはまだなの?


さてあまりあとがきを引っ張ってもアレなのですが手短にもうひとつ。コロナも2021年10月時点で第5波までが襲来しており、海外ではまた新型株が出現したり西ヨーロッパで感染拡大が起きたりして 「第6波が来るのでは?」 などと言われています。 筆者的にはもう毒性も弱くなって死者数も減ったし、普通のインフルエンザ並みの対応でいいんじゃないの……と思っていますが、TVや新聞はまだ煽り続けているようなので、しばらくマスク生活は継続するのでしょう。

それでも観光施設はぼちぼち本格稼働に向かっているようで、今冬はハンターマウンテンスキー場も営業再開するようです。これでうまく世の中のレジャー産業が復活していくならいいんですけどね。

<おしまい>