2024.02.25 窮乏のサンフランシスコ路(後編その1)
■3日目

さて3日目がやってきた。明日はもう帰国日なので自由に動けるのは今日までだ。懐具合も寒いことだし今日も安上がりなチャリ旅で行ってみよう。
地球の裏側からやって来てチャリンコとは何やってんだ感はあるものの(笑)、どのみち棚ボタ式に得られた休暇であるし、こんな過ごし方をしたって悪くはあるまい。昨日は郊外を走ったので今日はサンフランシスコのダウンタウンを巡ってみようと思う。

ところでホテル前には市内循環バス(Muni)の停留所があって、初日につくった Cripper カードで乗ることができる。当初筆者はこれに乗ってあちこち出かけることを考えていたのだが、初日のチャリ旅の結果、バスは使わないとの判断に傾いた。

というのもバス停は主要な観光ポイント(=要するにお金を使うショッピングモール)以外では分布がスカスカで、「これは」 と思った景色があってもそこに停まってくれるわけではない。結局、自転車の利便性のほうが小回りが効いていいじゃない、というのが筆者の正直な感想なのだ。

さてそう決めたらまずは朝飯といこう。これはもう、ジャンクフード以外の選択肢はない。Carks Jr. とかいう日本ではあまり馴染みのないハンバーガー屋があったので入ってみる。昨日のバーガーキングと違ってこちらではホームレスはいないようだ。

注文したのはいちばん安いセットメニュー。興味深いことに日本のような "すっぴんバーガー" というのはなく、最低ランクでもチーズバーガーの体裁になっている。アメリカ人はとにかくチーズが好きみたいだ。
■おおチャリよ!

腹を満たしたら、ハンバーガー屋から徒歩20mのレンタルサイクルステーションに寄ってみる。サンフランシスコ市内にはこんな感じでレンタル自転車やキックボードのステーションがあちこちにある。地元民はこれをサッとレンタルして乗っていき、別の適当なステーションい乗り捨てるような使い方をしている。

支払いは Clipper カードだ。しかしカードをかざしても反応がない。ウェブサイトのアドレスが書いてあったのでスマホでサイトを開いてみると、これを借りるためにはユーザー登録をしなければならず、有効な米国内の電話番号(国番号01で始まる)を入力しろと表示された。つまり外国人旅行者は相手にされていないらしい。……ひどいな、便利そうだと思って期待したのに(笑)

余談になるけれどアメリカ社会というのは自由とか平等を叫ぶ割に、いざそれを享受しようとすると "お前はダメだ" と排除されることがよくある。人間を相手にする場面では 「そこを何とかお願いにゃん♪」 が通ったりするのだけれど、自動化というかIT化が進むと "問答無用で蹴りだされる" ようになってしまって窮屈だ。 ……誰だよ、こんなシステムを考えたヤツは。
■結局、昨日のレンタル屋よふたたび(笑)

仕方がないので、本日も出発点はこのケーブルカーの旅にすることにした。ただし行先はフィッシャーマンズワーフではなく、ハイドビーチ駅行きの便に乗る。昨日のレンタルサイクル屋の最寄り駅だ。
昨日の状況でだいたいの街歩きの要領はわかった。Google Map 上の情報(特に商業施設)に信頼性はない。市内のショップ類は家賃の値上がりと治安の悪化を嫌気して移転しているところが多く、実際に営業しているかどうかはその場に行ってみないとわからない。そんなものを信頼して無駄足を重ねるより、確実に営業しているところに行くのが良い。

ああデジャヴ感満載の移動風景。……まあ、いいんだけれどね(笑)

さて昨日と同じレンタル屋を訪れて 「やあ、また来たよ」 と挨拶すると、店員氏はやや怪訝そうな顔をしていた。 どうやら昨日の件でクレームを入れに来たと勘違いしたらしく、レシートのチェックを始めたので 「いやそうではない、昨日のサービスが気に入ったからまた借りに来たんだよ!」 と力説した。とたんに店員氏の表情が明るくなるのが面白い。 一度契約しているので2度目は超速で手続き完了した。

本日はダウンタウンをぐるりと周遊するコースを行く。事前に行先を決めていたのはコイトタワーのみで、あとはざっくりと市街地を一周できればよいというくらいのフリーダムな予定だ。こんな簡単コースでも15kmくらいは走ることになる。
ちなみに旅行ガイドでよく取り上げられるツインピークスは、上記MAP(↑)の左下ちょい外側にあるのだが、治安が悪すぎて個人客は行かないほうが良いそうだ。なんてこったい。
■埠頭のある風景

そんな訳で昨日も訪れたフィッシャーマンズワーフ界隈を抜けていく。中華街の旧正月イベントが明けたせいか、人通りが多めになっている。本日は埠頭のショッピングモールには入らず先を目指していく。

見れば路面電車が走っている。システムの古いケーブルカーと違って、こちらはモーター内蔵で自走するタイプだ。このあたりでは市民の足……というよりは観光客の足として使われている。

海岸には一見すると普通のビルのように見える建物が延々と並んでいる。実はこれが埠頭の入り口で、写真(↑)に写っているのはピア35だ。

埠頭は露天ではなく超ロングスタイルの倉庫みたいなつくりになっている。ピア35の倉庫建屋はなんと300mもの長さがあって、日本の戦艦大和(263m)よりも大きい。そして巨大な建物がある割に、荷物を載せ降ろしするためのクレーン設備はない。貨物を船に乗せる場合は "クレーンを搭載した貨物船" を横づけするという運用になっている。

実は都市化の進んだサンフランシスコの港湾部は、現在では卸売市場や博物館、クルーズ船乗り場(兼駐車場)などになってしまっていて、コンテナターミナルとしての機能は湾の反対側=オークランドの海岸線に移ってしまっている。
ちなみにハイテク産業の集積地として有名なシリコンバレーはサンフランシスコ湾の南端、サンノゼの付近にあるのだが、湾の南端は水深が浅い湿地帯で良港には恵まれない。ゆえに実質的に貨物の輸出入拠点はオークランドの貨物ターミナルで、サンフランシスコの都市部を通らずにサンノゼまで鉄道とハイウェイで結ばれている。もしガテン系の物流設備マニア(なんだそれ)が居たら、オークランドに行ってみることをお勧めしたい。ここにはサンフランシスコ側とは比較にならない巨大なコンテナターミナルがある。

とはいえ目下のところ物流マニアではない筆者はサンフランシスコ側のややレトロな港湾風景を楽しんでいる。見ればさきほどのピア35に隣接するピア33では、なんとアルカトラズ行きのクルーズ船ツアーが出ている。ちょっと覗いてみようか。

WEB上ではもう予約がいっぱいとなっていた筈だが、温泉宿の空き部屋と一緒で実は当日現場に行けば枠はあったりするらしい。見れば Next Available Tour が Today とか平然と書いてあるな(笑)

せっかくのチャンスなので列に並んでみた。しかしここでまさかのクレジットカード認証NGとなってしまった(ぉぃ!)。ここは現金払いは受け付けておらず、クレジットカードで身分証明を兼ねた認証を行っている。 システムに文句を言っても仕方かないので、ここは諦めよう。
※筆者的には、クレカ認証NGという体裁ではあるものの、なんとなく外国籍とか特定の人種の排(以下省略)。

やがて本日の絶対にクリアしておきたいポイント、コイトタワーが見えてきた。小高い丘の上にあり、市内を一望できるビューポイントだ。

斜面が急なのでタワーに至るにはいささか面倒な回り道が必要になる。ちょっと奥に折れてゆるゆると走っていく。こういう観光ガイドには載らない小径をゆくのは面白い。

街角を見れば、こんなところにも桜が咲いている。散っている花弁はなく、満開直前の7分咲きといったところのようだ。

昨日のサウサリートでも桜が咲いていたけれど、筆者はどうやらオフシーズンの中でも比較的良い時期にやってきたということになるのだろうか。すくなくとも真冬のど真ん中という感じはしない。

さて坂の勾配がだんだんとキツくなってきた。もうすこしで丘の上だ。
<つづく>