2006.09.03 桧枝岐村へ(その2)




■舘岩蕎麦




店の中には客はおらず、川を背にした障子戸からは西日が差し込んでいた。侘び寂び感がかなりイイカンジになっている。




とりあえず天蕎麦を注文してみた。ちなみにここは蕎麦の産地で、舘岩蕎麦はちょっとしたブランド蕎麦になっている。




筆者は食べ物の味の表現には疎いのでグルメマンガみたいな語りはできないが、普通に旨い。ちなみに一昔前の蕎麦は黒い皮の部分まで含めて粉に挽いていたので黒っぽい色調(いわゆる黒蕎麦)だったが、ここでは皮を除いて身の部分を挽いていて白蕎麦になっている。



 

■前沢集落




蕎麦を頂いてさて先を・・・と思ったところ、案内板が立っていることに気づいた。ここは前沢集落といって古い山村集落がよく保存されている場所なのだそうだ。時間はあまりないけれどちょっと寄ってみようか。




集落入り口には、バッタリと呼ばれる杵突き小屋があった。




すっかり苔むして、風雪に耐えて鄙(ひな)びているぞ感がある。

ここに注いでいる水は集落の上流から引いている沢水で、昔は家2~3軒にひとつごとにバッタリが並び、蕎麦や稲の脱穀に使われたという。すぐ隣には水車小屋もあって、しかもそれは観光用に作られたものではなく昔から使われている本物が保存されている。これはナニゲに凄いことである。




これがその奥側に集落があった。ちゃんと人が住んでいるので電柱などが立ってしまっているが、それでも古い山村集落の情景がよく残っている。

ここが何故貴重なのかというと、大正時代に大火に遭って集落全体が一度全滅したという事件があり、その後同じ大工集団によって復興がなされたために、家屋の構造などが伝統様式で一様に統一されているのである。(集落は、一本の細い沢筋に沿って並び、貴重な水を各家で分け合う構造になっている)

ちなみにこの周辺の川および山は一般人は立ち入り禁止で、この集落の住民が "山の幸" の優先採取権を持っている。山菜やヤマメ、イワナなどの川魚はここの住民の生活の糧でもあり、行政によって保護されている。21世紀の日本にもまだこんな場所があるというのはちょっと驚きだ。




沢水は、各家の玄関先で小さな溜まり場を経由している。どうやらここで炊事用などの水を汲んでいたらしい。見るとどの家も野菜などをザルやバケツに入れて冷やしていた。




…で、せっかくなので集落の一番上まで(といっても200mくらいしかないけれど)登ってみた。沢水の取り入れ口には鎮守らしき神社がひとつ。由緒書きのようなものは無いが、水、神社、集落の位置関係をみると、日本の山村集落のテンプレートのような立地になっていることがわかる。民俗学的には非常に貴重なところのような気がした。



屏風岩はスルー!




・・・と、感心ばかりはしていられない。すっかり日が陰ってきてしまったので大急ぎで先を急ぐことにした。途中の屏風岩は写真1枚だけ撮ってパス!(笑)




そして桧枝岐村に入ったのは既に午後5時近くなってからのことだった。

<つづく>