2024.02.23 窮乏のサンフランシスコ路(前編その3)




■ 2日目




さて2日目の朝がやってきた。サンフランシスコの日の出は遅い。冬至から3ヶ月経過して徐々に日は長くなっている筈だが、日の出は 06:49 頃であった。




朝も7時頃になると街はぼちぼち動き出す。本日は海沿いをチャリで走る予定でいる。レンタル屋のあるフィッシャーマンズワーフまではケーブルカーで移動してみよう。




■ ケーブルカー




そんな訳でケーブルカーの発着場にやってきた。 しかしもう営業開始時刻は過ぎているのにチケット売り場に職員が出勤していない。さすがはリベラルなサンフランシスコ市営鉄道、客の利便性より職員のフリーダムな労働環境が優先しているぜ!(笑)




車両担当の職員氏はもう仕事を始めていて、転車台をえっちらおっちらと手動で動かしている。 車体を停留所まで押していくのも人力である。




チケット売り場が機能していないためか、料金はいらないというのでありがたくタダで乗車させてもらう。こんなので経営が成り立っているのかちょっと心配になるな。ちなみに正規の乗車賃は7ドルで、どこで乗降しても定額だ。




乗車するとさっそく発進である。 運転はシンプルで、軌道下にあるケーブルを金属製のパッドで掴むか離すかで操作する。ケーブルは営業時間中はずっとぐるぐると動いている。この掴む(グリップ)動作から、ケーブルカーの運転手はグリップマンと呼ばれるらしい。(※一部の特撮マニアで人気のグリッドマンとはちょっと違う)




ケーブルを掴むレバーのほかには、ブレーキ操作のペダルがある。坂道の多い軌道上では、ケーブルを離すと車両が坂道を転げ落ちていってしまうので必ずブレーキを効かせなければならない。このグリップとブレーキの操作には結構なノウハウが必要だそうで、熟練するまでには時間を要するらしい。




ちなみにブレーキはこんな構造で、なんと木の板で踏ん張るだけという漢の仕様だ。消しゴムのようにどんどんすり減ってしまうので2~3日毎に交換していく。機構としては100年前から変わっていない。




ケーブルのパワーは強力で、坂道をずんずんと登っていく。




付近の路面傾斜はこんな感じで、写真の箇所で水平水準に対する角度としては10度、勾配に換算すると18%くらいになる。

ちなみに日本の法令(道路構造令)ではこれはアウトで、許容できる勾配は最大12%、それも時速20kmという速度制限付きになってしまう。本来ならクネクネと九十九(つづら)折りで路面を通すべきところで、それを直線道で力任せに走り抜けるという発想は、少年ジャンプの脳筋マンガ並みの方法論のように思えた。

※サンフランシスコ市内の坂道では勾配30%を越える道もある。




おお、海が見えてきたな。坂の上から見るサンフランシスコ湾は波もなく穏やかだ。 まるで高層ビルの上にいるような景観だけど、もちろんこれは坂道のアップダウンの激しさからくるものだ。




やがて坂を降りていくと、終点のテイラーストリート駅に到着。




すぐさま転車台で車両の向きを変えて復路便の準備が行われる。これを一日中繰り返すのは結構な重労働だな。 伝統といえば伝統なのだけれど、100年前から基本システムが変わっていないというのは従業員にとってはいささか厳しそうな気がする。回転部分の電動化投資くらいすればいいのに。




さて停留所の脇にちょうど良い感じのMAPが掲示されていたので、ここで地理的な説明をしておきたい。駅の位置はここ(↑)な訳だが、目的地であるフィッシャーマンズワーフまでには1kmほど歩かねばならない。地図上では Pier39 と書いてあるあたりだ。

Pier(ピア)とは埠頭のことで、港の拡張にともなって増設され、今では50以上がつくられている。サンフランシスコ港の公式埠頭以外にもローカルでつくられた埠頭がいくつもあり、港全体としては5km以上にわたって並んでいる。




スターバックスが営業していたので朝飯を済ませ、埠頭まで少し歩いてみよう。




 ■ 徒歩でとほほの巻




そんなわけで歩き出したのだが、路上には謎のシートがちらほら見える。実はこれはホームレスの寝床だ。トラブルを起こさないよう静かに通り過ぎてゆかねばならない。




もう8時をすぎてビジネスタイムの筈だが商店はシャッターを下ろしたまま。 Google Map でみると8時開店から11時開店まで営業時間はバラバラのようだが、朝食需要を当てこんで8時からやっているはずのカフェ類がほとんど営業していない。




そうこうしている間にビーチストリートに到達。海岸はもう目の前だ。




レトロな舵輪とカニのエンブレムのモニュメントがみえてくると、いよいよフィッシャーマンズワーフである。直訳すると "漁師の波止場" で、商店街化している Pier39 付近を中心に周辺のいくつかの埠頭を合わせた東西1kmくらいの範囲を大雑把に指す(※)。最初に入ったのはイタリア系移民の漁師だったそうで、カニ料理が有名らしい。

※狭義には Pier39 のみを指すこともある




……しかしそれにしても人がいない(笑)




……あ、でも海岸にはぼちぼち人は出ているんだな。いやーよかった、よかった。取り残されてしまったのかと思ったよ。




さて目的のレンタルサイクル屋は Google Map によれば営業は AM 08:00 からとなっている。もう開いている筈だが……ん?




なんと、閉店しているではないかーっ!
ええい Google の役立たず! ここからさらに2kmほども歩かねばならんのかい(笑)




うーむ、貴重なサイクリングツアーの時間が失われていく……徒歩でトホホな気分だが、他に交通機関はないので歩くしかない。




どうやらレンタルサイクル屋は転々と移転を続けているらしく、途中で 「一時閉鎖」 の表記のある店舗跡をいくつも見かけた。 いや営業していないなら Google Map の表記も直してくれないと、旅行者は困るぞ(笑)




ここも店舗の看板はあるが移転のお知らせのみが貼ってある。 移転のたびにフィッシャーマンズワーフの中心街からは遠ざかっていき、最終的にはやや不便な坂の上に落ち着いたらしい。




そんなわけでようやく到達したレンタルサイクル屋。 自転車に乗る前にウォーキングでひと汗かいてしまった訳だが、とりあえず飛び込みで 「レンタルよろしく~」 と入店してみた。 事前予約などはしていなかったが台数は充分にあり、クレカの認証も通ったので無事本日の足をゲット。




ちなみにレンタル屋では電動アシスト付きのチャリを激しく勧められた。聞けばサンフランシスコの丘陵地にはアップダウンが50か所ほどもあって、モーターパワーは必須だという。ここは素直に従うことにする。

さてそんな次第で、予定より1時間ほど遅れたけれど、いよいよ本日の旅の始まりだ。


<つづく>